【花まるコラム】『教える者として』桂田拓弥

【花まるコラム】『教える者として』桂田拓弥

 私は普段、花まる学習会の教室長として働くとともに、役者・声優としても活動をしています。近年は新型コロナの影響で実質活動を休止している状態でしたが、久々にお声がかかり、舞台に出演することが決まりました。

 感染防止の観点から、客席の半分しか集客ができない、場合によっては中止の可能性もあるなど、大きな制約があります。それでも私にとって有難い機会。この数か月間、花まるの授業を行いながら稽古にも打ち込んできました。

 役者としては駆け出しのうえ、舞台が始まればしばらくの間舞台現場に立つことになるため、不安と緊張の毎日が続いています。共演する方々は多くの経験を積んできた人ばかり。稽古へ行くたびに学ぶことがたくさんあります。先輩方に置いていかれないよう、必死に喰らいつく毎日です。稽古中、演出家によく言われるのは、
「失敗を恐れずやってみなさい」
ということ。 芝居の表現には正解がありません。試行錯誤しながら自分なりの表現を見つけていかなければならないのです。
 私が慎重すぎる性格だということ、恐る恐る演じていることが演出家には見抜かれているのでしょう。そんな私に対して、先程の言葉をくださったのです。
「稽古場はいくらでも失敗して良い場所。練習・挑戦できる機会を思いきり活用しなさい」
この言葉も、自分に何度も言い聞かせるようになりました。

 時を同じくして、花まるではオンライン授業を開催しました。今後、情勢がどのように変化しても授業を提供できるよう、子どもたちにオンライン授業の取り組み方や機器の操作を伝えるためです。すでに学校でオンライン授業を経験している子もいましたが、花まるの授業で初めてオンライン授業を受けるという子もいます。画面に現れた子どもたちは、いつもより固い表情をしていました。
 緊張している子どもたちに伝えられることは何か。思いついたのは、先程の演出家の教えでした。大人でも苦戦することのあるPCの操作。なれない機器操作を覚えながら進める授業では、上手くいかない場面も出てくるでしょう。しかし、オンライン授業の仕組みや感覚を知ることは、これからの生活にも必ず役立ちます。「あたらしい物でも練習して得意にする」という努力を経験する場にもなるようにオンライン授業を提供していこうと決めました。
 そして始まったオンライン授業。授業の冒頭で、私から子どもたちに「機器操作で失敗してもいい。焦らなくていい。この機会を活用してたくさん練習しよう」と話しました。子どもたちは、「ミュートの解除」「カメラに顔を映す」「表示される名前を変更する」など、たくさんの操作に挑戦しながら授業を受けました。一日ですべての操作を覚えることはできなくても、経験は必ず次に活きていきます。オンライン授業実施に伴い準備を進めてくださった保護者のみなさま、本当にありがとうございました。

 失敗を恐れず挑戦すること。簡単なようで、実行するのは難しいものです。いま、身をもって感じています。それでも、子どもたちが同じ心構えで授業に参加しているのを見て、私も負けていられないと気を引き締めました。このおたよりがみなさまのお手元へ届く頃、私は舞台の本番に臨んでいます。芝居への挑戦、そして本番を通して得た教訓から、将来子どもたちが生きるうえで大切なことを伝えていく人間でありたい。その志を胸に秘めて、全力で挑んでまいります。

花まる学習会  桂田拓弥(2021年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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