年長クラスの思考実験で「4色塗り分け」を扱ったときのことです。この問題では、以下のような形を隣同士が同じ色にならないように4色を使って塗り分けます。
順序だてて考えることが重要で、好きなところから、好きな色から塗っていくと難しくなります。最初は好きな色で塗りつくしていた子も、段々と「もう隣に塗れる色がないな…」と考えこむ様子が見られました。さらに問題に慣れてくると「塗ったところの隣をどんどん違う色で塗ったら、上手くいきそう!」と考えるコツをつかんでいました。
順序だてて考えていたものの、塗る色がなくなり手が止まってしまったSくん。いま塗っている場所の色を変えれば正解することができるので、「ほかの色に変えられそうなところはある?」と尋ねてみました。すると、一生懸命考え込んでも変えられそうなところは見つからないようでしたが、「虹色にしてもいい?」と、4色を混ぜて使うという方法を考え出しました。4色しか使えないとわかっているからこそ、この4色でどうするかを考えたのだと思います。もう使える色がないのなら混ぜて新しい色を作ってしまおう!という柔軟な発想力が素敵だなと思いました。
同じく発想力が豊かだなと感じた出来事があります。小学生コースの授業で「レインボータイム」に取り組んでいたMくん。「レインボータイム」はより高度な思考力問題のことで、時間に余裕のあるときなどに挑戦します。
この日の問題は迷路でした。スタートからゴールまでの間に矢印が書かれていて、向きの通りに進まなければならないなど制限のある迷路です。解き進めていくと、問題がレベルアップしていきます。何度も何度もやり直し、根気強く挑戦している姿が見られました。考え込んだからこそ、できたときの達成感はとても爽快だったのだと思います。「できた~!!」と立ち上がって大喜びのMくん。しかし矢印通りに通っていないところがあり、惜しくも正解ではありませんでした。もう一度考え込み、次に見せてくれたのは、自身で矢印を付け足した解答でした。「ここに矢印があったらゴールできた!」とのこと。正解ではないのでもう一度考えてもらいましたが「いい方法を思いついた!」と純粋に思っている素直な姿が印象に残っています。
彼らのような自由な発想力とそれを実行する力は、この時期ならではの特徴だと考えています。大人からすると一見ルール違反やずる賢い行動だったかもしれません。しかし、彼らには決してそのような感覚はなかったのだと確信しています。きっと、何とか正解へたどりつく方法はないかと必死に考え出した答えだったのだと思います。
大人になるにつれて、このような自由な発想は自然と生まれにくくなるのではないでしょうか。それはルールを正確に理解できたり、守ろうとする意識が芽生えたりするからだと思います。逆に言えば、幼児期はルールに縛られることなく、自由に発想できるのだと学びました。同時に、この自由な発想を生み出そうとする意欲を失なわないような声かけをしたい、そして見守っていきたいと改めて思いました。
花まる学習会 佐藤綾香(2021年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。