【花まるコラム】『子どもの時間』早乙女優介

【花まるコラム】『子どもの時間』早乙女優介

 最近、月日が過ぎるのをより早く感じるようになりました。子どもの頃は、たった20分間の休み時間でも、校庭に出てラインを引き、ドッジボールに没頭しました。子どもってすごいなあ、としみじみ思います。一説には、子どもははじめての経験や体験が多いので、大人に比べて時間の流れが遅く感じるのだそうです。

 さて、7月に入会した1年生Kちゃんの話です。当初、Kちゃんは運筆がゆっくりで、鉛筆の持ち方が崩れがちでした。しかし、弱音を吐く姿や投げ出す姿は一度も見たことがありません。むしろ「もっとやりたい!」ということが多い、前向きな性格です。そんなKちゃんに、鉛筆の持ち方クイズと称して正しい持ち方を教えるうちに、Kちゃんは持ち方が違うことを自分で気づけるようになっていきました。そんなKちゃんが先日、運筆のスピード、正しい鉛筆の持ち方、正しい姿勢が重要視される「あさがお」という教材の時間に、あさがお大賞に輝きました。本人も鉛筆の持ち方は特に意識していたらしく、「やったね!テキパキ書けていて、持ち方かっこよかったの見ていたよ!」と声を掛けると「えへへ!」と照れながらも喜んでいました。

 次に、小学2年生のYくんの話です。 Yくんも入会したばかりなのですが、周りの子と打ち解けるのが早く、楽しそうにしていた一方で、作文の時間になると固まっていました。「どうしたの?」と声をかけると「作文はいっぱい書けないから好きじゃない」とのこと。作文を長く書かなければいけないと思っている子は、よくいます。そこで「なんで、長く書かなければいけないの? Yくんの好きなこと書いていいんだよ!」と伝えると、その日は2行ではありましたが、大好きな電車について書いていました。そして、翌週、驚きました。Yくんがスラスラと作文を書き始めたのです。そこには、とにかく楽しそうに作文を書いている Yくんの姿がありました。「作文を書くの楽しい?」と尋ねると、 Yくんは満面の笑みで「うん!」と言いました。苦手だと思っていたことに、たった1週間でここまで取り組めるようになる、子どもの前向きで素直な心を肌で感じた瞬間でした。

 このように子どもとかかわっていると、毎日新しく、楽しい発見があります。子どもたちといると自然と私も毎日が濃く、そして楽しく感じられます。また、 教室には、小学1年生から2年生の1年間と、大人の1年間は過ぎる早さが異なるのだな、と肌で感じられる瞬間があふれています。ここに、たった20分間の休み時間でもラインを引いてドッジボールをする幼少期の経験に近いものを感じます。短い時間のなかで全身全霊、すべてを楽しみつくす、そんな経験が子どもを成長させるように思います。

 新鮮で楽しく濃密な時間、子どもがもっとやりたい、楽しいと思える授業を、これからもつくってまいります。

花まる学習会  早乙女優介(2021年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

花まるコラムカテゴリの最新記事