【花まるコラム】『コロナ禍の中学受験を終えた子どもたちを振り返って』佐々木慧

【花まるコラム】『コロナ禍の中学受験を終えた子どもたちを振り返って』佐々木慧

 2021年の中学入試は、緊急事態宣言中というこれまでにない異例な状況でしたが、各中学校が感染症対策を行い、ほぼ例年通りの試験内容で行われました。私が担当しているスクールFCの受験生も、大きな体調不良もなく、無事に入試を終え安堵しています。ですが、2020年3月、全国の小中学校に臨時休校の要請が出た時期から、「今年の6年生の中学入試はどうなってしまうのか」と私自身も不安を抱えながらの一年間でした。そのなかで、子どもたちがどのように受験生としての一年間を過ごし中学入試に向かっていったかを、2人の男子の事例を通してお話しいたします。

 1人目の男子、Sくん。Sくんはユーモアがあり、クラスをおもしろい話で盛り上げる男の子。どの教科の授業も、「そうなんだ!」「なるほど!」と楽しみながら良い表情で学んでいました。FCでは1学期の授業をZoomを用いたオンラインで行いましたが、画面越しでも表情豊かにこれまで通りの発言や質問をし、しっかり学習内容を積み上げることができていました。お母さまに小学校の休校期間中の様子を聞くと、自宅にいる時間を活かしてパズルをたくさん解いたり、いろいろな本を読んだり、”長い春休み”を満喫して楽しそうに過ごしているとのことでした。「焦ってもしょうがないですからね。この状況を本人が楽しみながら過ごせればいいと思います」というお母さまの温かい見守りもあり、入試直前期でも楽しそうに勉強していたSくん。見事、志望校の合格を手にしました。

 2人目の男子、Tくん。Tくんはダジャレが好きで、ボソッと「アルミ缶の上にあるミカン…」とつぶやいたりして、まわりの子をクスクス笑わせる男の子。ふだんの授業はリアクションも大きく、楽しそうに学んでいましたが、オンライン授業になり、Tくんは大人しくなりました。私が”Tのダジャレ聞きたいな~”と言っても、「いや、いいです…」という反応。Tくんはクラスの友達と同じ空間にいたかったのです。Tくんのやる気は上がらず、Zoomのオンライン授業中に、自分の顔と手元に向けるべきカメラをちょっとずつずらして手元を見えないようにしてこっそり本を読むなど、サボることも覚えてしまいました。お母様と相談して、授業を受ける部屋をリビングにしたり、課題に取り組む時間をお母さまに見てもらったりするなどの対応をしましたが、受験に対しての気持ちも下がり、成績は急降下。
 9月の模試では、Tくんの志望校から偏差値が10以上離れた状況になってしまい、そのままの志望校でよいか、という三者面談を行うことになりました。Tくんも模試の厳しい数字を見て、このままではまずい、と思ったのでしょう。「絶対志望校は変えない!いまから本気でやる!」と強く宣言してくれました。対面授業が再開し、友達と一緒に学ぶ環境に戻ったことでやる気が復活したTくん。最後は見事に合格を勝ち取りました。

 コロナ禍により、過去の受験生には例のない過ごし方をした今年の受験生。どの子も“例年通りであれば起きなかった困難”に直面したと思います。ですが、中学受験の歴史においては特殊な受験であったとしても、子どもたちにとっては、生まれて初めての、一度きりの中学受験。ただ、素直に、ひたむきに、自分の目の前の中学受験を乗り越えていった子どもたちの姿を思い出すと、子どもは大人の想像以上に「困難をしなやかに乗り越える力」を持ち合わせていると、今年は特に強く感じさせられました。子どもたちが結果として手に入れた志望校合格はもちろん素晴らしいものですが、それ以上に、この一年間を乗り越えたことそのものに対して、私は心から拍手を送りたいと思うのです。

 最後に、あるお母さまからいただいた受験体験記の一部を添えさせていただきます。

コロナ禍の受験大変ね、かわいそうね、と言われることもありましたが、むしろ受験のおかげで学びは止まることなく、たくさんの方々が自分たちのために奔走してくださったことに感謝し、制限ある中でもあきらめず受験に挑戦した「記憶に残る受験生」であることを、ずっと誇りにしてほしいと思います。

スクールFC 佐々木慧(2021年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員のみなさまにお渡ししています。

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