【花まるコラム】『みんな良かったね~これからもずっと~』樋口雅人

【花まるコラム】『みんな良かったね~これからもずっと~』樋口雅人

 「あ~あの毎週来ている『たいそうのおにいさん』みたいな方、花まるの先生だったのね!」と、お友だちのお母さんが話していましたよ…との情報を、年長Rくんのお母さまから教えていただきました。私にとっては実に嬉しいお知らせでした。もちろん普段の服装に引っ張られた面も多分にあるのでしょうが…もしかしたら幼稚園でのふとした立ち居振る舞いなど、些細な一挙一動からもそうしたイメージを抱いていただけたのかもしれません。何と言ってもNHK「たいそうのおにいさん」といえば、「うたのおにいさん」とともに、子育て中のお母さま方の間では至極好感度の高いキャラクター。こうした「自分のあずかり知らぬところでのいい噂」は、本当に嬉しいもの。「本人がいない所での噂話」には、マイナスな意味での「陰口」の対義語として「陽口(ひなたぐち)」という造語もあるそうですが、それは陰口が人に与えるダメージと同じくらいの振り幅で、人を喜ばせてくれるものなのでしょう。

 二年生Mちゃんのお母さまから、「先生からいただくメールの内容をうちの子に伝えると、いつもすっごく喜んでくれるんです!」とのお話をいただきました。授業が終わると講師が口々に、子どもたちのその日に光ったエピソードをたくさん話してくれるのですが、それをメールでお母さま方にお伝えするようになってから…「これってお母さまだけでなく、子どもたちにも大いに喜んでもらえるものなんだな」ということに、あらためて気づかされました。確かに、子どもたちにとってみればこうして間接的に伝わる「褒めトーク」は、先述の「陽口」にあたるもの。ある意味、直接褒められるよりも嬉しいものなのかもしれませんが、どうやらその嬉しさの「一番の理由」は…また別の所にあったようです。

 ご自宅でピアノ講師をされている四年生Aちゃんのお母さまより。「レッスン中、私が褒めると子どもっておもしろいもので、必ず見学しているお母さまの方を向くんですよね。ホントに嬉しそうな表情で…」―そうです。子どもたちは褒められるともちろん嬉しい。しかしそれ以上に、その想いを噛み締めるより先に、それを見て嬉しそうにする「ママの笑顔」を見たいのです。いつだって子どもたちは、大好きなママを喜ばせたい。「私が頑張ったから、ママが喜んでくれた!」というその事実。自分に向けられたその笑顔― きっとそれこそが、子どもたちにとっては一番嬉しいご褒美なのでしょうから。

 「どうしても子どもをうまく褒められなくて…」とおっしゃるお母さま方は少なくありません。いやむしろ、それは世のお母さま方共通の感情でもあるのでしょう。期待が先行してしまう。感情が先に立つ。不安からあれこれ口出ししてしまう。それらはすべて、つい勇み足を繰り返してしまうほどの、溢れる「想い」あるがゆえ。子どもたちは異口同音に口にします。「うちのお母さんって怖いんだ。でもね、優しいよ」― みんなみんな、わかっています。どれほどの愛情の下で自分が育てられてきたか。言葉にはできずとも、深層心理の奥底でしっかりと認識しています。それはどれだけ自分のことで、ママが喜んでくれるのかを知っているから。例えば、私がお送りしたメールの内容をお伝えいただくときですら…お母様ご自身の眼差しに、声色に、醸し出すオーラに…いったいどれだけの慈愛が、「期せずして」溢れ出ていることか。子どもを喜ばせるにあたって、我々の提供している情報など些細なもの。すべては「大好きなママが自分のことで、こんなにも喜んでくれている」という、その至福の前には―

 みんなみんな、良かったね。今年もいっぱいいっぱい、大好きなママに喜んでもらえたね。でも本当はね、勉強ができたから…とかじゃない。キミたちが毎日元気で、たくさん笑って、ご飯を美味しそうに食べて、気持ちよさそうにぐっすり眠る…そんな毎日を過ごしてくれたからこそ、なんだよ。だからどうか来年も、みんなが元気に過ごせますように。そしてキミの大好きなママがこれからも…いっぱいいっぱい笑ってくれますように。

花まる学習会 樋口雅人(2021年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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