【花まるコラム】『隣は仲間』伊藤潤

【花まるコラム】『隣は仲間』伊藤潤

 「勉強って楽しいな!」は花まる学習会の合言葉です。
「僕はこの合宿を通じて、『仲間』の大切さを学びました。」
これは、スクールFCの夏合宿で私が担当したクラスの小学6年生Yくんが書いた作文の冒頭です。

 夏合宿は4泊5日で、1日10時間以上勉強するという鍛錬の時間そのものです。しかし、その中身は重く憂鬱な時間ではなく、常に明るさと笑いがありました。
 私は、この合宿で一つのクラスの責任者を任されました。そこでは授業をしっかりおこなうのはもちろんとして、それに加えて「自学力」向上のため、机での姿勢や質問の仕方を伝えました。また、明るく本気で勉強する雰囲気作りや、子どもが受験勉強をやらされるのではなく自分自身の目標として取り組めることを意識しました。そのため、個別面談を何回も行い、子どもの話に耳を傾けました。同時に自分の想いをのせていろいろな話をしました。

 そのなかで「仲間と勉強することの大切さ」も伝えました。一生懸命を楽しむためには、仲間の力が必要だと考えていたからです。
 「友達と仲間の違いって、わかるかな。友達は自分の好きな人となり、いやだったら無理になる必要はないよね。けれど、仲間は選べない。たまたま出会ったその場で、そこにいる人たちと作っていく必要がある。いま、この合宿で出会った人たちがそうだし、将来仕事なんかでも、偶然集まる人たちと作っていく必要がある。出会った人と仲間になれるかが、幸せな時間を過ごせるかの大きな鍵になる」
 「仲間を作るにはルールを守る必要がある。たとえば、嫌いな人には挨拶しないとか集まりに遅刻するとか、そんなことをしたら仲間はずれになるんだ。だから、どんな人にも挨拶できるようになりたいし、時間を守れるようにもなってほしい。仲間の存在が勉強をする君の力になるのなら、勉強は教室だけでするものじゃないよ。合宿では、そういう時間の過ごし方も大切にしてほしい」
 「これは勉強合宿なので、もしかしたら、このクラスのなかで一度も話をしない人もいるかもしれない。でも、たとえば、その人が自習中に一生懸命鉛筆を動かしていたら、自分も頑張ろうと思えるよね。そういう人は友達ではないかもしれないけど、仲間なんだ。逆に、その人がうるさくしていたらどうだろう。勉強のやる気が少し落ちるんじゃないかな。クラスが仲間になれるかは一人ひとりの行動にかかっている。だから、みんなでいいクラスを作ろう。仲間になろう」そんな話をしたのです。

 「初めてこのクラスとわかったとき、知らない人ばかりで、席も四方八方知らない人ばかりの場所でした。でも、だんだんとその人たちと仲よくなったり、みんなで団結して1位を目指したりしたときに、同じ受験生でも、先生が言っていた通り『隣は仲間』なんだと思いました。一緒にふとんを敷いたり、歯磨きをしたりとチームで行動するときにも感じました。それが一番心に残ったこと、一番楽しかったことです。
 心に残ったことはほかにも、嫌いな野菜を残さず食べたり、姿勢を意識できるようになったりしたことです。勉強合宿で学んだことを活かして、明日からは、テストで油断せず集中して取り組み、姿勢を意識して勉強に励んだり、隣はいつも受験するライバルだとして見るのではなく、仲間だということを意識したりして、S中に向けて前向きに走ろうと思います。」
これは冒頭の作文のつづきです。

 「勉強って楽しいな」
そう子どもたちが思えるためには、勉強の中身だけを整えるのでは足りず、「隣は仲間」と思える環境も必要なのだと思います。
 花まる学習会でもスクールFCでも、仲間と学べる場を作っていきます。

花まる学習会 伊藤潤(2021年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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