【読書の旅コラム⓫】『読み聞かせはなぜ大切なの?』平沼純 2022年1月

【読書の旅コラム⓫】『読み聞かせはなぜ大切なの?』平沼純 2022年1月

 私はよく、小学校高学年の中学受験コースの授業でも絵本の読み聞かせを行うことがあります。
 たとえば、五味太郎さんによる『言葉図鑑』シリーズは、第1巻の「うごきのことば」(動詞)にはじまり、「かざることば」(形容詞や形容動詞)、「なまえのことば」(名詞)など、全10巻を読めば国文法の知識を楽しみながら身につけることができます。
 また、レオ=レオニの『スイミー』は、倒置法や体言止めなど詩の表現技法がほぼすべて使われているため、一冊読めばかなりの学びになります。
 しかし、そうした「学び」以上に、みんな何よりも読み聞かせそのものを楽しみにしているのです。
 高学年ともなれば、当然『言葉図鑑』や『スイミー』くらいの絵本は自分ひとりで読める力はあります。それでも、「読んで!」と言ってくるのです。

■読み聞かせで心がつながる

 そんな姿を見ると、子どもたちは読み聞かせをとおして読む人との「心のつながり」を求めているのではと思えます。たとえひとりで読める本であるとしても、大人の生身の「声」で届けるからこその意味があるのです。
 長年にわたり福音館書店の会長を務めた松居直さんは、『絵本・ことばのよろこび』のなかで、特に就学前の子どもの場合、「絵本は大人が読んでやるもの」と言い切っています。
 少なくとも子どもがひとり読みできるまでは、大人の責任で本を選び、時間の許すかぎり読んであげる。そして、たとえひとりで読めるようになっても、一定以上は読み聞かせをするべきだというのです。
 子どもは「文字の文化」ではなく、「声の文化」に生きています。つまり、文字でなにかの情報を得るのではなく、他者の声を通して身のまわりの世界を認識していく段階にいるのです。
 読み聞かせをくり返すことで、子どもたちは耳で聞いた言葉をもとに頭のなかでイメージを働かせ、さまざまなことを感じ取ることができます。
 そして読み聞かせの一番の効用は、本を読んでいる人との心の結びつきが生まれ、子どもたち自身が「大人が自分のために時間を割いて本を読んでくれた」という満足感を得られるということ。
 ぜひ子どもたちとたっぷり読み聞かせの時間を持ち、さまざまな「心のつながり」を感じてみてください。

スクールFC 平沼純

『絵本・ことばのよろこび』松居 直 著/日本キリスト教団出版局


🌸著者|平沼 純

平沼純 教育心理学を研究し、「自分の視点を持って考え、力強く生きていく力の育成」を目指して教育の世界へ。国語を専門とする学習塾で読書・作文指導などに携わったあと、花まるグループに入社。現在、小学生から中学生までの国語授業や公立一貫コース授業のほか、総合的な学習の時間である「合科授業」などを担当。多数の受験生を合格へ導くとともに、豊かな物語世界の楽しさ、奥深さを味わえる授業を展開し続けている。

■著書紹介
『子どもを本好きにする10の秘訣』(実務教育出版)
著者:平沼純・高濱正伸

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