「えっ、毎日こんなに夏期講習があるの!?」
「そうだよ。でも、お母さんは5年生のとき、もっと通っていた覚えがあるよ」
「うっそ、せっかくの夏休みが…」
「何を言っているの、受験生!夏の間に4年生でやってなかった国語と社会の問題集もやるよ!」
「ムーリー!」
「無理じゃない!(クワッ)」
…私からすると、自分で受験すると決めたじゃない、5年の夏なのだから当たり前、と思うが、マイペース長男のSは、受験生でも夏休みなのだから、けっこう遊べると思っていたらしい。甘い、砂糖のように甘い…!大リーグボール養成ギプスをはめるか!?とつっこみたくなるが、ここでそういえば、と思い出す。中学受験を経験した私だが、通っていた塾の先生に、
「あなたは本番1か月前にやっと本気を出したものね~」
と受験後に言われた黒歴史を。私自身もその当時、相当なぼんやり受験生だったのだ。結局は似た者親子か、と少し口調を柔らかくする私。
確かに、よっぽど上位層の負けず嫌いの子か、夢や目標ががっちり固まっている子か、いままでに似たような努力経験がある子でない限り、小学生の子どもが、はじめての受験に到達点の見通しを立てて、現状に危機感を抱きつつ、自ら足りない領域を自覚してコツコツと取り組むなんて…まぁおおかたは夢物語である。
だが、ひたすらブーブー文句を言い続ける長男Sと話していると、イライラが込み上げてくる。だんだん口調が尖ってくる私を横目で見て、夫がナイスフォロー。
「Sは4年生のときは算数と理科だけで、国語と社会は塾に通ってなかっただろ。夏の間に遅れを取り戻さないとなると、いつやるんだ?学校がある期間に自分で計画してできるのか?お母さんはSの目標に協力してくれているんだぞ」
教室で子どもたちに「ムーリー」といくら言われても、そうだよね、と受容して対話できるが、日々一緒にいるわが子だとつい感情が波立って“かわいさ余って憎さ100倍”状態になることがある。そうそう、こうやって片方がキーとなりそうなときは、冷静な方がフォローしてくれると、だいぶ助かるんだよね、と久しぶりに夫に感謝する。いままでの子育ての中で、「両親が二人して子どもを責めない・子どもの逃げ場がまったくない状態にしない」を、夫婦の共通見解にしていてよかった…と思う今日この頃。
さて、Sの社会の力の強化のために、夏の間の週末は、社会カルタ大会(歴史人物や都道府県のカルタ)を家族で開催した。はじめは私が優位だったのに、だんだんと夫とSの実力が追いついてきて、接戦に。そして、夏のサマチャレ(テーマ別集中夏期講習)で都道府県カルタが扱われてからは、ついにSの圧勝という展開に…。やっぱり、場の力学というか、集団授業の切磋琢磨の雰囲気の中で生まれる子どもの集中力には敵わないな~と悔しく思いつつ、問題集もなんとか夏休み最終日に終え、あっという間に5年生の夏は過ぎていった。果たしてこの夏の努力は、秋からはじまる外部模試の結果に反映されるのか。ドキドキするのは親ばかり。
花まる学習会 川波朋子
【登場人物紹介】
私:都内の私立中高出身。過去にはスクールFCで小中学生の英語も教えていた、花まるの先生。子どもが産まれてからは事務方まわりの仕事を多くしている。そろそろアンガーマネジメントを学ぼうかと思っている。
夫: 地方の公立中高出身。息子たちの成長が喜びで、Sが持ち帰るテストを解いては「まだ俺もいける」「直観では、もう敵わなくなってきたよ」と一喜一憂する子煩悩パパ。
長男 S:4歳から生粋の花まるっ子として過ごす。今年の夏(5年生)のサマースクールでは「火おこしの国」に参加。「○○中学合格」と願いごとを焚火にくべたらしいが、なんと「合格」の「格」を間違えて書いたという…まさか、受からないフラグ!?(涙)
次男 Y:保育園児。外面がよい甘えん坊。最近のはやりは「おしり」。毎日100回以上言っては、このうえなく幸せそうに笑っている(50回を超えると私は遠い目)。