その4 小学校の先生が面談で絶句⁉(5年生12月)

その4 小学校の先生が面談で絶句⁉(5年生12月)

「先生、ちょっとご相談があるのですが」
「はい、もちろんです」
「あのー、塾の先生に薦められて、都立中学の受検も考えているのですが……」
「えっ、都立ですか……!? そ、そうなんですね」
「今さらな感じもするのですが、学校の成績を、ここから上げるために何をすればいいか、相談に乗っていただけるでしょうか」
「はいっっ!  えーーーーーーと……ではまず……」

 5年の秋冬はだんだん受験モードが強まり、模試でも志望校を書いて、順位や判定が出る時期。だがコロナ禍でほとんど学校見学もできておらず、なかなか第一志望の学校以外の選択肢を広げられていない。そんななか、FCの先生に薦められた都立(公立中高一貫校)の学校もいったん、志望校として意識し、小学校の先生にも相談してみたのだが……。
 あれ、先生、絶句しましたよね、いま。そういえば、5年生の春の面談は、夫に行ってもらったのだが、
「授業中に、Sくんはうとうとしていて、眠いみたいです」
と指摘されたんだっけ、と思い出す。すっかり忘れていた厚顔無恥な私。だが、今年から担任になった若いA先生は、ありがたいことに中学受験にも理解があるとママ友から聞いている。まぁ授業中に寝ている子が内申点を取れるわけがないよね、と内心恥ずかしく思いながらも、カエルの面に水のごとく、何食わぬ顔をして、話を進める。すると
「まずは記述の量を増やしましょう」
と、泣けるほど具体的でごもっともなアドバイスをいただく。
「急に記述の質を上げるのは難しいと思うので、まずはこんなふうに、ノートに書く自分の考えや感想を、3行から5行にしましょう。そこで努力を判断します。おいおい質も目指してほしいと思います」
手を抜いて3行でいつも終わらせているSに溜息をつきつつ、なんて親切で誠実な先生なのだと、一気に信頼度が爆上がりする。

 帰宅して夫に
「もう、だいぶ恥ずかしかった~、一瞬、絶句されちゃったよ!」
と報告すると
「まぁ、いままでまったく都立は考えていなかったし、学校の成績も気にしていなかったしなぁ」
となぜか慰めモード。いや、あなたの息子でもあるんですけどね……。Sにも「まずは記述の量を増やす」方針を言うと、「げぇぇ、ウソでしょ」とまったく前向きではない。夫にも加勢してもらい、「FCの先生もお薦めしてくれたし、学校のA先生も親切にもアドバイスをくれたから、まずは言われた通り、やってみよう」と説得し、Sもしぶしぶ了承。ふぅ、なんだかなぁ。早めに学校見学へ連れて行かねば。

 公立中高一貫の受検は、私立中学受験と出題の形式が異なり、必要な力もやや異なる。おそらく社会や漢字など、知識や暗記を求められる問題で点数が取れず、「考えて書く問題のほうが好き~(できるかどうかは別として)」と言うSに合わせて、FCの先生が薦めてくださったのだろうが……。なにしろ狭い募集枠の厳しい戦いなので、そもそも内申点が取れないだろうSは圏外となる可能性のほうが高い。だが、学費のことや進学後の授業内容を考えると、親から見ても公立中高一貫の受検は確かに魅力的ではある。適切な2月3日の志望校を、ほかに設定できているわけでもないので、あわよくば、のチャレンジ校としていったんそのまま突き進むことにした。さて、親のこの時期のこの判断は、はたして吉と出るのか凶と出るのか……まだ誰も知らない。

花まる学習会 川波朋子

【登場人物紹介】

:東京都内の私立中高一貫女子高出身。過去にはスクールFCで小中学生の英語も教えていた、花まるの先生。子どもが生まれてからは事務方まわりの仕事を多くしている。長男の身長が自分に迫ってきて、ついつい「ちょっと並んで」と鏡の前でまだ抜かされていないことを何回も確かめてしまう。靴の大きさはすでに抜かされた。

:地方の公立高校出身。数独やMENSAクイズ好き。Sの低学年時代は持ち帰ってくるレインボータイムに一緒に取り組み、「ウソだろ、レベル99解けない!」「オレ解けたぜ!」と、Sと一喜一憂していた子煩悩パパ。

長男 S:4歳から生粋の花まるっ子として過ごす。夏に声変わりがはじまり、秋にかけて、だんだん声が低くなってきた。身長も毎年10cm近く伸びている。身体はひょろデカい、のんびり屋。

次男Y:保育園児。外面がよい甘えん坊。腕の皮ふに唇をつけて息を出すと、おならのような音を出せることを教えてしまったら……「ねぇママ、どっちが汚いおなら(のような音)を出せるか勝負しよう」とニヤニヤしながら日に何度も言ってくる。

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