あっという間に過ぎ去っていった夏休み。今年もサマースクールに参加してまいりました!コースは、サムライの国。太ももには紙風船をつけ、手にはスポンジでできた刀を持ち、軍に分かれて戦います。紙風船が割られてしまうと負け。つまり、紙風船は“命”です。軍には総大将というリーダーがいて、総大将が倒されてしまうと、軍全員が負けです。総大将は大人が務める時もあれば、子どもが務めることもあります。最後に天下統一戦という戦いがあり、そこで勝った軍が優勝です。
3年生Mちゃん。彼女は、サマースクールに参加するのは2回目でしたが、サムライの国に参加するのは初めてでした。「なんでサムライの国を選んだの?」と聞くと、「男の子よりも強くなりたいと思ったから!」とのこと。「一人でも多く倒したい!」と言っていました。
最初の合戦は、天候が悪かったため、体育館の中で行うことになりました。一戦目、Mちゃんはあっけなく倒されてしまいました。「こわくて攻められなかった」と一言。割れた風船を持ちながら、涙を流していました。悔いが残る戦いだったようです。
二戦目。彼女の目つきは少し違いました。こわさから腰が引けていた彼女とは大違い。悔しい気持ちを糧にして、刀をしっかりと構え、どんどん前に攻めていきます。
「パンッ」と音がしました。笛が鳴り、一時休戦。敵大将の風船が割れたのです。そして割ったのは、なんとMちゃん。すぐに私のもとに走ってきて、「私、総大将の風船を割ったの!」と満面の笑みで教えてくれました。初戦で怖気づいていた彼女はもういません。「なんで割ることができたの?」と聞くと、「周りの子たちが一緒に戦ってくれたから勇気を出せた」とMちゃんは言いました。
次はいよいよ天下統一戦。これまでの戦いは、前哨戦です。天下統一戦で多く勝った軍が優勝なので、子ども達の勝利への思いは最高潮に達していました。天下統一戦は、全部で二戦行います。一戦目は、大人総大将を倒すことができれば勝利。しかし、隙をつかれ、負けてしまいました。二戦目は、子ども総大将。Mちゃんは立候補しました。「もしも負けてしまったら、周りの人から責められるかもしれないよ」と言われても、「やる!」とみんなに宣言。彼女は、子ども総大将を務めることになりました。
「絶対にMのことをまもるから!」と護衛隊が彼女のそばにかけよります。Mちゃんは決して一人ではありません。一人一人が「勝ちたい」と願い、戦っていました。
しかし、戦いは不利な状況に。他の軍を攻めていた攻撃隊が次々と倒され、Mちゃんと護衛隊が敵に囲まれてしまいました。彼女は冷静に考えています。そして突然敵に向かって走り出しました。敵の輪が崩れ、Mちゃんを追いかけます。広い草原を無我夢中でかけめぐりました。「私は倒されてはいけない」そんな思いからMちゃんは一人で走り抜けることを選んだのです。とても勇敢でした。
彼女は再度敵に囲まれ、倒されました。その瞬間泣き崩れたMちゃん。「みんなごめんね。勝てたはずなのに。本当にごめんね」嗚咽を漏らしながら、言っていました。その姿を見て、仲間から出てきた言葉は「ありがとう」でした。
「男の子よりも強くなりたい」と言っていたMちゃん。しかし、その目標を達成するためではなく、いつの間にか仲間のために戦っていました。彼女がこの夏得たものは、仲間を思う尊い気持ちでした。
花まる学習会 太田優美
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。