「まだこんな本読んでるの?これだと絵ばっかりだから、もっと字が多いのにしたら?」
「あなたはもう小学生になったんだから、絵本は卒業ね」
「途中でやめるの?一度読み始めたんだから、最後まで読みなさい」
「読み終わったの?じゃあ、どんな話で、どう思ったのかを言ってみて」
「またそれ読んでるの?前にも読んだじゃない。いい加減、ほかのを読んだら?」
「本を読んでおけばためになるんだから、なんでもいいからたくさん読んでおきなさい」
わが子に心豊かな人間に育ってほしい、そのために少しでも本好きになってほしい、と思うのは自然な親心です。しかし、その気持ちが強いあまりにうっかり言ってしまう言葉の数々ー。実はこれらのなにげないひと言が、子どもをかえって本嫌いにさせてしまう原因の一つになってしまうのです。それは、本というものをあまりにも短絡的に、何らかの学習の手段=「教具」として考えすぎてしまっているからではないでしょうか。
豊かな読書体験を通して得られるものは、決して学校の勉強や受験対策に役立つ知的能力だけにとどまりません。 もっと幅広くて奥深い、子どもが一人の人間として現実を力強く生きていく糧となるありとあらゆる体験が得られるのです。そんな読書を、 非常に限定された学習の手段にしてしまうなんて、あまりにもったいない。
豊かな読書体験を通して得られるものは、決して学校の勉強や受験対策に役立つ知的能力だけにとどまりません。 もっと幅広くて奥深い、子どもが一人の人間として現実を力強く生きていく糧となるありとあらゆる体験が得られるのです。そんな読書を、 非常に限定された学習の手段にしてしまうなんて、あまりにもったいない。
私はこれまで教育の現場で、子どもたちへの読書指導を授業の中心的な柱として位置づけ、本を通じてたくさんの子どもたちの成長を見続けてきました。それを通して、はっきりと確信を持って言えることが二つあります。
一つは、ひとたび子どもが様々な物語世界を味わう喜びを知ることができたら、学力だけでなく、その子の成長があらゆる面で非常に豊かになるということ。
そしてもう一つが、生まれつき本が嫌いな子どもなど一人もいないーー ただ本が嫌いになってしまうような環境や、周りの大人からの働きかけがあったに過ぎないーー ということです。
本を通して様々な物語世界の旅を楽しみ、たっぷりと幸福な時間を味わった子どもたちは、大人になってもあらゆる豊かさを感じて、自分の人生を力強く生きていくことができます。
では、子どもが本を心から楽しいと思えるようになるには、どんな環境や言葉書が必要なのでしょうか。 本を選ぶときや読み聞かせをするときに気をつけること、本を読むことで身につくことはどのようなものか、そもそもなぜ本は読まなければいけないのか。
この連載では、そんな数々の疑問に対して、実際の読書指導の現場から見出されてきた実感や知見をもとにお答えしていきます。
『子どもを本好きにする10の秘訣』(実務教育出版)では、 これまでの子どもたちへの読書指導を通して私が「自信を持っておすすめできる」と判断した本をブックリストとして紹介しています。ブックリストは私が選んだと同時に、教室の子どもたちや、かつて子どもだったたくさんの人たちに愛され、読みつがれてきた本のリストであるとも言えます。大人の方も、ぜひ「騙されたと思って」子どもの本を読んでみてください。 この世界や人生の大切なことを、子どもの透徹した視点で描いたこれらは数々の本は、実は大人にとっても非常に実りあるもの。何冊か読み終えたときには、必ずやこう思えるはずです。
「子どもの本っておもしろい!こんなにおもしろいもの、子どもだけに読ませておくのはもったいない。自分も読んで楽しまなくっちゃ!」
子どもに本を読ませようと意気込む前に、まずは大人自身が思い切り楽しんでください。何よりもその姿が、子どもが本を「一生の友」とするきっかけになるのですから。
スクールFC 平沼純