【花まるコラム】『きっと明日はいい天気』村田寛典

【花まるコラム】『きっと明日はいい天気』村田寛典

 「いや! むり! できない!!」
 床に寝て手足をバタバタさせながら泣いているのは2年生のAちゃん。
「やったことないもん! Aにはできないもん!」

 サマースクール初日の夜、お楽しみ会の練習をしていたときのこと。Aちゃんの泣き声が宿に響き渡りました。

 3泊4日のサマースクールでは、夜の活動でお楽しみ会をおこないます。制限時間は2分間。班ごとに出し物を発表する、というものです。

 Aちゃんの班はサマースクールの思い出を歌にすることにしたようです。楽しかったことを一人ひとりに聞いていたところ、Aちゃんが泣き出してしまったのでした。

「ちゃんとできないかもしれない。みんなが楽しんでくれるかわからない。怖い。やりたくない」
声をかけても、怖い、やりたくない、の一点張り。その日、お楽しみ会の話し合いに参加することはできませんでした。

 2日目の午前中は、秘密基地作り。
「ちゃんと秘密基地を作れるかなぁ…」
と不安がるAちゃん。
「ちゃんとしたものを作るんじゃなくて、みんなと作るのが楽しいんだよ!」
笑顔で話しかけたのは、同じ班の5年生Bちゃんでした。Aちゃんは基地の玄関に置くカッコイイ石を探していました。
「こんなに大きな石を持ってこられたの! A、頼りになるなぁ」
「たくさん石を探し出せたね! Aは石博士だ!」
黙々と石を運ぶAちゃんを見て、班のメンバーが驚いていました。
「ここはね、ベンチにするんだよ! 特別に座ってもいいからね!」
とAちゃんからおすすめされた石のベンチの座り心地は最高でした。

 2日目の夜はキャンプファイヤー。
「いや! むり! できない!」
聞き覚えのある声が宿内に響き渡りました。Aちゃんはキャンプファイヤーが初めてなので不安になってしまったようです。
「外が暗いの、怖いもん。火も熱いでしょ? 怖いもん」
涙を流しながら話すAちゃん。
「怖いことを怖いって言えるA、すごいね! 私なら我慢しちゃうかも。Aのことを守ってあげるから一緒に行こう」
BちゃんがAちゃんのことをぎゅっと抱きしめます。少しずつ落ち着きを取り戻したAちゃんは、班のみんなとキャンプファイヤー場に向かいました。

 火が灯された瞬間は、
「こんな大きな火を見たのは初めて! 怖い!」
と呟いたものの、泣いてしまうことはなかったAちゃん。キャンプファイヤーを満喫しました。

 キャンプファイヤーが終わり、帰りのバスを待っていると、子どもたちから歓声が上がりました。満点の星空が輝いていたのです。
「星がキラキラしているね!」
飛び跳ねるAちゃん。
「Aが頑張ったから見られたんだね。Aはたくさん勇気を持っているんだね」
リーダーが話しかけると
「そうかなぁ」
顔を真っ赤にして照れているAちゃんがいました。

 3日目の活動は、100人おにごっこ。宿対抗でしっぽとりゲームをおこないました。制限時間は1分。背中に入れたたすきをおにに取られたら負け。制限時間を過ぎて生き残っていた人数分、宿にポイントが入ります。また、代表として背中についているたすき以外に、ポケットにたすきを隠し持つ子を決めます。その子が逃げ切ったら自分の宿に、捕まってしまったら捕まえた宿に特別ポイントが入ります。宿の代表には、Bちゃんが選ばれました。

 一人、また一人と捕まえられていくなか、おにを見事にかわして逃げ回るBちゃん。いかし、残り5秒というところで捕まってしまいました。代表を捕まえたことで大喜びの相手チーム。捕まってしまった悔しさからBちゃんはその場で泣き崩れてしまいました。そんなBちゃんにさっと駆け寄る子がいました。Aちゃんです。
「勝てなくても、BといっしょにおにごっこできたのがAは楽しかった! B、がんばってくれてありがとう」
AちゃんがBちゃんをぎゅっと抱きしめます。宿のみんなのところに戻った二人は拍手で迎えられました。
 3日目の夜、お楽しみ会本番です。Aちゃんの班は『虹』の歌詞にのせて楽しかった思い出を歌いました。
「仲間がいたから、小さな勇気をたくさん出せた!」
そう歌うAちゃん。班のみんなと肩を組んで嬉しそう。泣き虫Aちゃんはもうどこにもいませんでした。

花まる学習会  村田寛典(2023年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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