【花まるコラム】『任せられる場所を目指して』栗林英一

【花まるコラム】『任せられる場所を目指して』栗林英一

 思春期や反抗期という言葉を聞いて、どんなイメージを持ちますか? 悪いことがかっこいいと思ってしまったり、自立する心が芽生えてくるからこそ親を疎ましく思ったりしてしまう…私にもそんな時期はありました。心当たりがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。私の教室でもこのようなエピソードがありました。

 6年生Sさんの作文。題名は「父親」でした。Sさんのことは2年生の頃から知っていて、当時からとても素直に自分のことを作文に書く子でした。家族をテーマにした作文には「お父さんが大好き!」とつづられていたこともあります。

 しかし、6年生になったいまの作文では「少し父親のことが嫌い」と書いてありました。理由は「年頃のせいか」とのこと。自分が思春期に入ったことを自覚しはじめたのです。おうちでくつろごうとしたタイミングで急に掃除を始められ少しムッとしてしまうことや、台所に行ったついでに「○○とって」と言われて少しイラっとしてしまうことが書かれていました。

 Sさんは心身ともに成長したからこそ、新しい感情に気づいたのです。その新しい感情は必ずしもいいものではない。自分が思ったように感情表現ができなくて困ってしまうこともあると思います。ふとした発言が誰かを傷つけてしまうこともあるのです。

 Sさんはいま、父親を疎ましく感じてしまうのかもしれない。しかしそれは悪いことではありません。思春期の子どもにとって、さまざまな感情と向き合うことは相手を思いやることができるための成長に必要なことだと思っているからです。そしてきっと、思春期を経て感情の整理がつけば、きっとまたお父さんのことが大好きなSさんに戻るだろうと感じています。

 私自身も父親を疎ましく感じ、高校生のときには衝突ばかりの日々。口を聞かない時期がありました。Sさんと同じように小さなムッとしたできごとがたまりにたまり、イライラが限界にきてしまったことがあったからです。思春期を経て、たくさんの感情に出合ったからこそ、気持ちの整理がつき、いまでは父親と良好な関係を築けています。

 思春期の子どもに限らず、わが子にどんな声かけをするか、どのように接したらいいのか悩むこともあると思います。

 そんなときは、ぜひ花まるの先生を頼ってください。親の言うことを素直に聞けなくなる時期だからこそ「外の師匠」として信頼関係を築き、叱咤激励しながら子どもたちの学ぶ力、生きていく力を引き出します。

 そのためにも、普段からたくさん会話をして、花まるが子どもたちにとって「本音が言える場所」になることを目指します。毎日顔を合わせる人ではないからこそ、言えることもあります。
 そして、保護者のみなさまともたくさん会話をしたいと思っています。「鉛筆の持ち方を直そうと思っているのですが、私が言っても全然聞かないんです」「宿題のことでいつももめてしまうんです」…このようなご家庭での困りごとや悩みもぜひお聞かせください。

 子どもたちにとっても保護者のみなさまにとっても「どんなことでも話せる場所」をつくっていきます。

花まる学習会/スクールFC  栗林英一(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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