【花まるコラム】『あの子、すごい!』須永修平

【花まるコラム】『あの子、すごい!』須永修平

 「〇〇くん、すごく頑張っていましたよ!」
「本当ですか? うちの子、家では…」
嬉しそうに笑いながらも謙遜しているお母さんを見て、自分の母親のことを思い出しました。

 社会人となり、母親と離れてしばらく経ちますが、いまだに毎日のように連絡が来ます。「行ってきます」や「ただいま」といったあいさつを大事にしていた母。それがいまは携帯でのメッセージに変わりました。小学生の頃は幼心に過保護だなと思っていましたが、いまは家に帰ると「おかえり」の返ってこない「ただいま」が寂しくもあります。このように愛情深い母ですが、人前では謙遜して私のことを褒めるということはあまりありませんでした。そんな母との思い出深いエピソードがあります。

 小学3年生の頃、体育館での授業参観ありました。母は少し遅れて体育館に入ってきたため、私がどこにいるかわかっていませんでした。授業が始まり、後半で先生から私たちに質問が投げかけられました。普段の授業とは異なる授業参観の場でみんな緊張しており、誰からも手が挙がりません。そのとき、たまたま答えを知っていた私は、勇気を出して手を挙げて答えました。みんなから拍手をもらい、帰るときに友人の母親からも声をかけてもらいましたが、いつも以上に照れながら謙遜している母親の姿を不思議に思っていました。

 家に帰ってきてから、母は私に授業参観の出来事を話してくれました。遅れてきた母は、友人の母親を見つけ一緒に授業を見ていたそうです。そして、私が手を挙げて答えた瞬間。
「あの子、すごいね!」
少しばかり天然な母は、私だと気がつかずに素直に褒めました。
「あの子、修平くんだよ!」
友人の母親に教えてもらう結果となり母はとても恥ずかしかったようですが、私はなんとも言えない嬉しさを感じたことを覚えています。

 保護者の方とお話しするときに、親御さんからの言葉が最も子どもたちを伸ばす力になるとお伝えしています。普段の行動から愛を感じることもできるかもしれませんが、やはり実際に言葉にしてもらったときのパワーは格別です。

 私の母も、普段の行動に加えて、ことあるごとに愛情を言葉にして伝えてくれました。そのおかげもあって、生まれてから自分が愛されているか疑問に思ったことは一度もありません。しかし、私はまだまだ言葉にして感謝や想いを母に伝えることは、何だか気恥ずかしくてできません。実家にいた頃は、よく母に肩もみをして感謝を伝えていました。最近はあまりしてあげられていないので、今度実家に帰ったときには念入りにしてあげたいと思います。頑張りすぎて、こり固まっていないといいのですが。

花まる学習会 須永修平(2023年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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