高学年の授業ではSなぞぺーという教材を扱っています。これは低学年で使用しているなぞぺーの発展版で、宿題として1週間で1問に取り組みます。その後、教室で解説を聞きます。解いてきた子が解説をすることもあります。問題を解くだけでなく、相手にわかりやすく説明できるようになるというのもSなぞぺーの目的の1つです。
今回はそんなSなぞぺーにまつわる教室での出来事についてお話しします。
この日のSなぞぺーは、点を結んで正六角形をつくるという問題でした。
ある教室でHくんが今回のSなぞぺーの解説を買ってでました。その子は以前にも解説をしたことがあったので、正解であれば任せようかと思いました。すると、「Sもやりたいって」とHくんが言いました。
Sくんは以前にも解説に挑戦しようとしたことがあったのですが、そのときは問題を解きおえておらず、解説することができませんでした。しかし、今回の問題では解答も完璧でした。それならばSくんに任せてみようと思い。「Sくん、解説やってみる?」と聞きました。私は以前解説がしたくてもできなかったときのSくんの様子を見ていたので、のりのりで解説をするのかなと思ったのですが、Sくんは「いいや」と乗り気でない様子。理由を聞いてみると、
「勘でやったから」
と答えました。
この勘について話すことができるかどうかが大きな分かれ目になると私は考えています。勘というのは自身の経験から推測して予測を立てるということ。つまり、Sくんは自分がいままで解いてきた問題の経験から、今回の問題の解き方を推測しているのです。そして正解したということは、Sくんの見立ては正しかったということ。勘というものは偶然にだけよるものではないのです。このことは教室で子どもたちにも伝えました。
また、Sなぞの大切なポイントとして、考えた痕跡を残すというものがあります。正解を書くだけで終わりではなく、解説同様に、問題を解けなかった人がそれを見て、「わかった」「なるほど」と思えるようにするということ。それは問題文に線を引くことや、数字をメモ書きのように残しておくこと、考えた順番を記しておくことなどがあります。このちょっとした書き込みから子どもたちの思考が読み取れることがあります。一方、読み取れなかったときも私はチャンスだと思っています。なぜなら、私とは違う考え方、方法で答えにたどり着いたということだからです。そういったとき、私は子どもたちに質問をします。それに答えることができればしっかりと自分の考えを言語化できていること、自分の考えをまとめることができているというのがわかります。少し答えに困っているときはこちらから質問をします。「なぜここにこの数字を書いたのか」「ここに線が引いてあるのはどうしてか」など、質問はポイントを絞ります。そうすることで子どもたちも自分の考えを整理することができます。考えた痕跡を残すということは、思考の言語化の第一歩です。
自分の頭のなかにある考え方を言語化できるということは、その考えをしっかりとまとめることができている。論理的に考えることができているということです。また、だれかに解説するということは、よりわかりやすい表現など、相手の立場になって考えること、想像力が必要です。そして、相手に発信するわけですから表現力も大きく影響します。このようにSなぞぺーは考えることから、解説をするところまで、多様な力を鍛えることができるのです。
花まる学習会 坪田充生(2021年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。