サマースクールが近づくとある出来事を思い出します。当時4年生だったAちゃんにとってもきっと忘れられない物語…。
Aちゃんと出会ったのは「花まる大運動会」というコースでした。このコースでは2日間練習を重ねて最終日の運動会本番に挑みます。
Aちゃんはとにかく一生命な女の子。行きのバスでは「運動会でなわとびを頑張りたい」と言っていました。運動会にはいくつかの種目があり、基本は全員参加ですが、1人1種目決めて戦いに臨む「花まるオールスター決定戦」というものがあります。その種目のなかになわとびの二重とび対決があり、彼女はその種目を選びました。目をキラキラ輝かせながら「私ね、20回くらい跳べるんだよ!」とAちゃんは自信に溢れていました。
運動会本番の日。Aちゃんは気合い十分。数多くの種目がおこなわれ、いよいよ二重とび対決が始まりました。赤・青・黄の3チームに分かれて戦います(Aちゃんは青チーム)。最初は赤チームの子が挑戦しました。トップバッターでみんなが見守るなか、なんと40回跳びました。この時点でAちゃんが跳べると言っていた20回を上回っています。Aちゃんを見ると、真剣な眼差しでライバルの頑張りを見ています。次は黄色チームの番。それぞれのチームの想い・葛藤が渦巻くなか、大幅に60回を記録! 一番の盛り上がりを見せました。最後は青チームです。とうとうAちゃんの出番。勝つには60回以上の記録が必要です。Aちゃんは普段跳べる回数の3倍以上跳ばなければなりません。そして最後というのはものすごいプレッシャーだったでしょう。全員が固唾をのんで見守ります。10回、20回…Aちゃんの自己ベストを超え30回、40回、41回…でAちゃんの挑戦は終わりました。Aちゃんはその場で泣き崩れました。赤くなった足はAちゃんの頑張りを物語っていました。
花まるオールスター決定戦が終わり、次の種目が発表されました。それは、全員参加のなわとび持久対決。Aちゃんはさっきの悔しさをバネに、足が痛いにもかかわらず参加することを決意。一斉にスタートし、なわとび持久対決が始まりました。時間が経つにつれ徐々に人数が減っていきますが、Aちゃんは残っています。最終に近づき残りは2人、AちゃんとBちゃんでした。Bちゃんは、Aちゃんが二重跳びの対決で負けてしまったとき、一番はげましてくれていた友達です。2人とも限界に達していました。足もフラフラになり、いつ引っかかってもおかしくない状況。そして、とうとう一人の足が止まってしまいました。引っかかってしまったのは、Aちゃんでした。この日、2度目の挫折を味わいました。
数多くの成功者はたくさん失敗をしたからこそ、成功を掴みとっています。失敗や悔しさをバネにして人は成長していけます。いつかAちゃんも成功をつかみとれるときがくる。きっと、Aちゃんが成功したときの喜びは、忘れられない最高の宝物になるでしょう。
花まる学習会 有森萌葉(2023年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。