【花まるコラム】『きっかけひとつで』春木満之

【花まるコラム】『きっかけひとつで』春木満之

 早いもので最終授業を迎えることとなりました。今年もあっという間でしたが、無事に授業をおこなうことができたのも、1年間通して変わらず送り迎えをしてくださった保護者のみなさまと元気に通い続けてくれた子どもたちのおかげです。年の終わりを迎え、子どもたちの間では、クリスマスプレゼントに何をお願いするか、年末年始をどう過ごすかの話題で持ちきりです。みなさまは年末年始、どのようにお過ごしの予定でしょうか? 私の年末と言えば、毎年恒例の雪国スクール。今年も12月24日からのコースと12月27日からのコースにスタッフとして参加してきます。思えば花まる学習会で働くようになってから、年明けの教室での授業がスタートし、そして1年の終わりを雪国スクールで締めくくるという、子どもたちと最初から最後の最後までどっぷりかかわる生活をしていますが、野外体験での子どもたちの急成長ぶりにはいつも驚かされ、そして感動させられます。

 以前、雪国スクールで出会った4年生のRちゃん。運動に苦手意識をもっていて、リフトから上手く降りることに自信がない様子。私は、子どもたちがリフトから降りるのをサポートしていたのですが、Rちゃんがこの世の終わりだというような険しい顔つきでリフト降り場に徐々に近づいてきました。「リフトから降りるとき、絶対に体を支えてよ、じゃないと転ぶから、絶対だよ、絶対!」と大声で叫ぶRちゃん。1回目は、私が持ち上げるようなかたちでどうにかこうにか降りることができました。「やっぱり、私は運動に向いてない、無理だよ」と落ち込み気味のRちゃんでしたが、2回目、3回目と同じような状況が続き、ついに4回目、そのときが来ました。回数を重ねることで、少しずつRちゃんのリフトを降りる体勢が良くなっていることを私自身感じていたので、「本当に厳しそうであれば必ずサポートするから、次はギリギリまで自分の力でやってみよう」と伝えました。もう自分でやるしかないと覚悟を決めたのでしょうか、リフト降り場に近づいてきても一言も発さず、じっと地面を見続けるRちゃん。そして次の瞬間、背すじがピンと伸びた真っすぐな姿勢で、自分だけの力で降りることができました。「やったね、さすが!」と声をかけようと私が振り向くと、両手で拳を突き上げ、何かの大会で優勝したかのようにガッツポーズをするRちゃんの姿がありました。その1回の成功をきっかけに、自信をつけたことで、その後はこれまでの様子が嘘だったかのようにスムーズにリフトを降りるRちゃんでした(しまいには、「もう絶対降りるのを手伝わないでよ、手伝われるのはいやだから」と言われ、変わりすぎでしょとツッコみたくなりましたが…)。子どもたちの、あることをきっかけに急成長する姿には、驚きと感動があるなとつくづく思います。

 今年も1年、本当にありがとうございました。つい最近、今年を表す漢字が「戦」とニュースで見て、改めて世界情勢の厳しさとともに、サッカーW杯の日本代表のように本気で戦うことの素晴らしさを感じました。また次の年に向かって、私も全力で戦っていかなければならないと思っています。みなさまにとって幸せな一年になることを願っています。

花まる学習会 春木満之(2023年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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