花まる学習会・スクールFC卒業生のその後に迫ります。
第22弾は、大学に通いながら子どもたちの未来のために起業している、伝説の卒業生にインタビュー!
ようこそ先輩! 濱地音安さん
【花まる学習会】用賀教室(小1~4)
*担当教室長:中山翔太
【進路】聖心女子学院(初等科・中等科・高等科)→慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)
【現在】大学生
高濱 連絡をもらって驚いたよ。音安は幼い頃から文字の読み書きに困難のある「ディスレクシア」だったことがわかったんだね。
濱地 小学校に入学した頃からさまざまな検査を受けていたのですが、「知能的にも問題ない」と、特別な診断は出ませんでした。文章を正確に読むことは難しいのですが、拾えた一部の言葉をパズルのように組み合わせて推測できることもあって。
高濱 知能が高いから推測でカバーできていたのか。
濱地 中学生くらいまでは授業を聞いて、音で覚えていました。けれど中学3年生で高校の学習範囲を学ぶようになった途端に「教科書を読んでおいてください」など自学が必要なことが増えて、一気に成績が落ちたんです。やっぱり何かあると母が必死に調べてさまざまな検査を受け、高校1年生でやっとたどり着いたのが「読みの速度が小学1年生程度、書きの速度が小学6年生以下」という診断でした。
高濱 お母さん、すごいなぁ。大変だったよな。
■花まるの思い出
濱地 学校にあまり馴染めなかった私にとって、花まるは大切な居場所でした。キューブキューブが得意で、いつも褒めていただいて。サマースクールも大好きで、高濱先生のギター演奏に合わせてみんなで歌ったことや、川での飛び込みが印象に残っています。MVPのお菓子をもらったことも、思い出の一つです。
高濱 MVPに選ばれるのは簡単なことじゃないよ。音安にとって花まるは、できる部分を認めてもらえる、安心して活躍できる場所だったんだね。
濱地 高学年コースにあがるとテキスト自分で読むことが中心の授業になって、ついていけずに辞めてしまったのですが…。
高濱 そうだったのか。気づいてあげられなかったね。
濱地 当時は私自身もディスレクシアだとわかっていませんでしたし、母も「合わないだけだから、辞めればいいよ」と言ってくれて。花まるで過ごした日々には、楽しかった思い出しかありません。キューブキューブやなぞぺーでの思考力問題を通して、ものごとを多角的にとらえる大切さを学べたことが、いまの私を支えています。
高濱 嬉しいよ。後輩の花まるっ子たちに伝えたいことはある?
濱地 「得意を伸ばせ!」です。花まるの先生方がかけてくださって、私を勇気づけてくれた言葉でもあります。
■お母さんのこと
高濱 話を聞けば聞くほど、お母さんの対応が素敵だよね。
濱地 母は学校の成績を気にせず「別の能力があるからいいじゃない」と言い続けてくれましたし、ディスレクシアだとわかったときも「やっぱり自分の見立てが正しかった」と喜んでいるような感じで、「かわいそう」「ごめんね」などと悲観しなかったんです。そのおかげで、ディスレクシアを悪いことだと受け取りませんでした。
高濱 講演会でもよく伝えているけれど、14~15歳頃まで自己肯定感が潰れずに育てば、 あとは自分で乗り越えていけるんだよね。
濱地 実は現在大学1年生の妹も易疲労性の書字障がいだということがわかったのですが、その頃は診断が出ていなかったので「お姉ちゃんだけ特別でずるい!」という感じでした(笑)
高濱 家族みんなでポジティブに捉えていたんだね。
濱地 母は日頃から「自分で決断しなさい」と、どんな小さなことでも私に決めさせてくれました。そんな母が唯一「絶対にここがいいと思うよ」と入れてくれたのが花まるでした。自分の人生に前向きでいられたのは、読み書き以外の学びや野外体験でさまざまな経験をさせていただけたからだと思います。
高濱 音安の自己肯定感を育むのに必要な居場所を見極めて経験させてくれたのか。いや~、さすがだよ。
■学生時代のこと
濱地 運動も好きだったので、小学生の頃はラグビーに、中・高校生の頃はバスケに熱中しました。中学で入部したバスケ部では、入部して2週間でスタメンに入れていただいて。
高濱 すごいな。
濱地 部活動のおかげで、学校にも居場所を見つけることができました。顧問の先生には、学習面でも大変お世話になりました。
■困難を抱える子どもたちへ
高濱 会社を立ち上げたんだって?
濱地 社名を「ArcoBaleno」(アルコバレーノ)と決めたところです。イタリア語で「虹」を意味する単語で、「arco=弓」と「baleno=閃光」という言葉でてきています。困難を嘆くのではなく、得意な部分を伸ばして工夫して乗り越える、という想いを込めました。
高濱 おぉ~。
濱地 野村総合研究所が2021年に、発達障がいのある人々の社会的困難に伴う経済的損失は2.3兆円にのぼるという調査結果を発表しました。利益を生み出せるはずの人が働けていない現状を知り、得意な部分で補って活躍できるようにしたいと思ったんです。そのためには子ども時代に得意を活かせる職業の存在を知って夢や目標をもつことが必要だと思うので、さまざまな職業の友人に話をしてもらい、オンライン授業のようなかたちで子どもたちに届ける準備をしています。
高濱 ものすごく意義のあることだね。
濱地 発達障がいに悩む子どもたちだけでなく、そのご家族もサポートしたいと思っています。まだ資金も経験も少ないため、まずは私が当事者としてできることから、子どもたち向けに始めていきたいと思っています。最終的には誰もが納得のいく人生を歩めるようになって、私の会社が要らなくなる、つまり、私が無職になることが目標です(笑)
高濱 実は花まるでも「花まるエレメンタリースクール」というフリースクールを立ち上げたんだよ。ここで起こっている子どもたちの変化を、ぜひ見に来てほしい。いや~、運命を感じるなぁ。応援するよ!
濱地 ありがとうございます!