その5 お隣さんちにあやかりたい! (5年生2月)

その5 お隣さんちにあやかりたい! (5年生2月)

 2月2日の夜、マンションのゴミ置き場から戻ってきた夫がある報告をしてくる。
「あのさ、古紙回収の場所に、中学受験のテキストプリント一式が、紐でしばって山のように出されていてさ。たぶん、お隣のRくんのところだと思うんだけど…」
「えっ…」
二人でしばし、顔を見合わせる。隣のRくんは小学6年生で、今年、受験生だ。
「…山!? まさかもう受験終了ってこと? きっと2月1日の第一志望校に受かったってことだよね…そして、結果が出てすぐ、テキストプリント類を全部ゴミ出し!? ひょえ~…」
「ってことは、しばらく学校を休むって言っていたけれど、Sは明日からまたRくんと登校できるか。2月1日からの一週間は、親も送迎やらなんやらで仕事をやりくりするって職場の先輩が言っていたけどなぁ…すげえなぁ」
明けて3日の朝、息子と一緒に学校へ向かうRくんに
「おはよう! 受験終了?」
と聞くと、
「そう。今日からまた学校に行ける~」
とあっさり答えてくれた。やはり2月1日の第一志望校に受かったという。
「わぁ、おめでとう! すごい、さすがだね!」
と心から祝いつつ、来年の今頃に思いを馳せる。   はたしてわが家はこんなにも晴れやかに受験終了を迎えられるのか、そうではないのか。
 いつもおっとりと優雅に話すRくんのママだが、そのあまりの潔さと仕事の速さに脱帽するばかり。さすがでございます、と拝んでいろいろとあやかりたい気持ちでいっぱいだ。Rくんのご家庭はお姉さんもいて、4年前に中学受験を経験していることも影響しているだろうが、私だったらきっと、名残を惜しんでそんなにさっぱりすっきり切り替えられないだろうなぁ…。

 さてさて、受験まで正味一年だが、スクールFCのシグマTECH部門では、「夕ご飯をおうちで食べる中学受験」を掲げている。5年生までは、週末はリアル授業でモチベーションを維持しながらも、平日は通塾の必要がなく、オンラインですべて授業を受けることができた。通塾時間の大幅な短縮だ。下の子もまだ手がかかるし、塾弁当を用意できる自信がカケラもなかった私にも非常に優しいスタイルである。
 取り組むべき学習範囲も明確で、一週間の課題を、自分でスケジュール表に落とし込むことができるようになるまで、5年生の初期こそフォローが必要だったが、慣れてくれば、一人でできるようになった。集団授業は週2日だし、必要な学習部分を厳選してくれるおかげで、課題の量もそこまで多くはない。本人が続けたがったサッカーやテニス、ピアノなどの習い事も、曜日をやりくりして、続けてくることができた。
 そしてわが息子ながら、時間のやりくりがうまくなってきたようにも思う。朝に早起きしたら、好きなことをしていていいよ、と言っていたら、この一年は、朝6時過ぎには自然に目を覚まし、好きなゲームや動画を見るように。ゲームパワーでの早起きはいかがなものかとも思うが、朝の7時に計算・漢字だけはマストでやっているので、まずは早起きの習慣が大事、と黙認中。
 ちなみに模試の偏差値は、乱気流のように安定せず、回によって激しく上下している。昨年の夏に多少テコ入れしたつもりの社会は、いまだに点数が取れない…。ただし、よいときの偏差値を信じれば、Sがここに行きたいな、と言っている第一志望校は、合格圏内ではある。最難関校を目指しているわけではないし…と、結局は親も子もどこかまだのんびりしている、5年生の冬。中学受験での第一志望校合格率は約3割と言われていて、未来はまったく見通せない。だが、できうるならば、来年の今頃、お隣さんちのようになれますようにと切に祈る2月初旬であった。

花まる学習会 川波朋子

【登場人物紹介】

:東京都内の私立中高一貫女子高出身。過去にはスクールFCで小〜中学生の英語も教えていた、花まるの先生。子どもが生まれてからは事務方まわりの仕事を多くしている。夫と協力体制で、受験も子どもの思春期も乗り切れたなら、子どもが巣立ったあとも、よき関係を築けそうな気がする今日この頃。

:地方の公立高校出身。もともとは「なんでそんなところにお金かけるの、東京って変じゃない?」と中受否定派だった。近くの公立中学校に、スポーツ系部活の選択肢がほぼないことがわかり、「中学生男子は身体を動かしたほうがよい」という信念に基づき、俄然、中受に前向きになった。

長男 S:4歳から生粋の花まるっ子として過ごす。最近は、真冬でも半そで半ズボンを押し通すという、よくわからないこだわりを発揮する。大昔の同級生にもこういう子っていたよなぁ……昭和か! と母は突っ込みたくなる。

次男Y:保育園児。外面がよい甘えん坊。なんだかんだ遊んでくれる兄が大好きで、なんでもまねっこする。ちょっかいを出しては、返り討ちにあい、よく泣きわめいている。

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