今年もサマースクールに参加してきました。本当に多くの方々に支えられ、無事に終えることができました。ありがとうございます。私は、川遊びの国、サムライの国、秘密基地作りの国に参加してきました。川でたっぷり遊んだり、刀を振り天下統一を目指したり、ひたすら基地を作ったり。どれも特色のあるコースで、私も楽しく過ごしてきました。
今年のサマースクールは1年生Eくんとの出会いで幕を開けました。上野を出発し、3時間バスに揺られて、新潟に向かいます。10分ほどかけて関越トンネルをくぐり抜けたときに広がる景色は、何度見ても圧巻。遠くに見える山脈、きらきらと輝きを放つ川。「世の中、いろんなものにあふれているけれど、これが一番の贅沢だと思うな~」とつい、子どもたちに話してしまいました。宿に到着したら荷物を部屋に持ち込み、昼食タイム。お腹を空かせた子どもたちは、嬉しそうにお弁当を広げ始めます。各部屋の様子を見回っていると、唐揚げやミートボール、おにぎり、サンドイッチなど、家から届いたいい匂いが廊下に漂ってきます。エネルギーをチャージして、たくさん遊ぼうね、と心のなかで思っていると、ある部屋から、こんな声が聞こえてきました。「うっ…うっ…うぅ…!」1年生Eくんのようです。出発してからバスのなかでも変わった様子はなかったので、どうしたのだろうと声をかけました。「E、どうした? 気持ち悪いとか、どこか痛いとかある?」と聞いてみても、一向に返事はなく、俯き泣いたままです。「落ち着くまで一緒にいるから焦らなくて大丈夫だよ。Eが話したくなったら言ってね」と伝え、数分間隣に座っていました。少しずつ呼吸が整うEくん。これからサマースクールが始まるというところで出鼻をくじかれるようなことがあっては…と思い、Eくんの言葉を待ちました。やっとの思いで口を開き、こう話してくれました。
「ごはんがおいしい…。ママの作ってくれたお弁当がおいしくて…Eはママの作ったものしか食べられないから、今日の夜ご飯から何も食べられないかもしれない。もう…がえりだい(帰りたい)!」
ずきゅん!なんとまぁ…!私の心は一瞬でEくんに掴まれてしまいました。「そうかそうか。Eはお母さんが大好きで離れたくない!って思っていたけれど、ここまで頑張ってきたんだね。よくやったよ。それだけEを想ってくれるお母さんは優しいんだね。それに気づいているEも優しいんだね。どうしても寂しくなったらずっと隣にいてあげる。せっかく来たし、今日の夜までは頑張ってみる?」「うん、わかった…」とEくん。その後も何度か私のところでパワーをチャージ。活動、チャージ、活動、チャージを繰り返し、夜を迎えました。たくさん遊びお腹が空いたのか、宿のごはんももりもり食べたEくん。最終日には、友達と肩を組んで、帰路につきました。
野外体験に限らず、「親元を離れる経験」が子どもたちを成長させます。自分で何とかするしかない環境が、子どもたちをたくましく育てるのです。少し気が早いですが、Eくんが雪国スクールに申し込んでくれるかなと密かに期待しています。
花まる学習会 植田雅也(2022年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。