その6 あと半年もない……! (6年生9月)

その6 あと半年もない……! (6年生9月)

 あっという間に、6年生の夏が終わってしまった……。なぜだか不安が込み上げてくる。というのも、思いっきり夏をエンジョイ(死語?)してしまったからだ。夏期講習の合間をぬって、1泊ではあるが家族でのキャンプも楽しんだし、Sをサマースクールへも行かせてしまった。親も子も受験本気モードになりきれていないまま、夏の天王山を迂回してしまったような気がしてならない。

 いやいやそれでも、決してやるべきことをやっていないわけではない。6年生になり、平日の授業もオンラインではなく、通塾スタイルになったことで、いい意味でSのスイッチも少し切り替わったし、さらに増えた課題量もこなしてはいる。朝の計算・漢字も継続してできている。夏休みもほぼ毎日の夏期講習に通い、朝から晩までのサマチャレ(集中特訓講座)で学習体力もついてきたようだ。たまりにたまった小学生新聞も、夏の間に切り抜きだけは終わった。家でやった都道府県カルタ大会では、親はもはや惨敗だった。気をつかわれて、「次はオレが札を読み上げるから、父ちゃんと母ちゃんで競えば?」とSに言われたときにはがっくりときた。そう、ほかの子の成長も著しいだろうが、Sも成長している……のだ。

 4月からの変化では、Sは「スーパー算数」の講座へも月2回参加するようになった。親としては、習熟やテクニックに主眼を置きがちな受験算数にとどまらず、算数や数学という学問のおもしろさも知ってほしいという気持ちで、送り出している。各校舎から算数好きが集まってくるので、「すげー頭がいい奴らがいっぱいいる」と、周囲に圧倒される場面も多いようだが、それでも「今日はなんとか戦えた」という日もあり、Sにとって大いに刺激になっているようだ。

 親もやっと、オンラインサイトでの学校説明会申し込みのコツがわかってきて、5年生のときは負けっぱなしだった予約を勝ち取れるようになった。オンラインで申し込みができるのはありがたいが、先着順なのはいかがなものか、と正直思う。申し込みを忘れないようにタイマーをかけ、懐かしの時報を聞きながら、オンタイムでサイトの更新ボタンを押し、申し込み情報を必死でコピペしていく。Enterボタンを押して、「よし取れた!」という日もあれば、「うわ、もういっぱい」とすごすご引き下がる日もあるが、やっと勝率が上がってきたのだ。人気アイドルのコンサートチケットかと疑うほどの、1分1秒を争うこの激闘、受験生の親のみなさんがやっているかと思うと、本当に頭が下がる。
 コロナ禍ということもあって、人数も限られる人気校の予約がまったく取れず、学校見学も体験授業も行けていないままだったが、夏終わりまでに何校かめぐることができた。もっと早くにめぐっておきたかった……と思わなくもないが、滑り込みセーフと考えよう。実際に行ってみることで、子どもと学校の相性も肌感覚で見極めることができた。

 さて、9月のここからはもう待ったなし。いままでの通塾にプラスして、週末の特訓講座の開始、過去問の開始、毎月の模試と振り返り、文化祭見学、保護者会&面談、受験校の最終決定……とやることは目白押しだ。子どもも忙しいが、親のタスクもさらに増える。親から見ると、相変わらずマイペースなS。模試の成績も上がったり下がったりと変わらず忙しい。いろいろな不安はつきないが、あまり心配しすぎても仕方がない。習い事もすべて辞めるかお休みし、受験モードに入る準備は整った。最後まで一緒に走り抜ける覚悟を決める、9月初旬。

花まる学習会 川波朋子

【登場人物紹介】

:東京都内の私立中高一貫女子高出身。過去にはスクールFCで小中学生の英語も教えていた、花まるの先生。子どもが生まれてからは事務方周りの仕事を多くしている。夏、ついにSに身長を越され、悔しいような嬉しいような寂しいような眩しいような……不思議な気持ち。

:地方出身の子煩悩パパ。Sが持ち帰る「スーパー算数」の問題群を一番楽しんでいる。「すげえな、これ解ける小学生いるの!?」とSと解法を確かめながら、得意な分野をつまみ食い。

長男 S:4歳から生粋の花まるっ子として過ごす。毎年行っていたサマースクールも最後ということで、かねてから希望していた「無人島サバイバル」コースへ。魚が釣れずに醤油メシ……はなんとか回避できた模様。「楽しかった!」と輝く笑顔で帰ってきた。これできっと満足して受験まで頑張れるはず……!

次男Y:保育園児。ある日の朝食時、ニュースを見て時事ネタを話していたら、突然「ウクライナ情勢はさ~」とまるで解説するかのような声を上げたY。家族みんなで顔を見合わせて、大爆笑。聞きかじりの単語で、なんとか自分に注目を集めようとするお調子者。

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