2年生のYちゃんが、帰りの挨拶後にお父さんの横でシクシクと泣いています。ハイレベルな思考力問題「レインボータイム」の最後の一問ができなかったようです。
Yちゃんが帰ったあとの机を見ると、消しカスの山が。実はレインボータイムの問題は、大人でも苦戦するレベルです。それに果敢に挑戦し「できなかった!」と涙するその姿が、私には光り輝いて見えました。
また別の日、1年生のRくんは、花まる漢字テストが「できる気マンマン!」とニッコニコ。
しかし、テストの終盤、「この文字がわからない!」と心の底からの声。残り10秒になっても決して諦めませんでしたが、終了の合図とともに静かに涙を流していました。
少しだけ恥ずかしそうにしているRくんでしたが、かっこいい涙でした。
二人とも、「本気」でした。「本気」だったからこそ、悔しくてたまらなかったのだなと思います。
先日、花まる子ども冒険島に開拓のお手伝いに行ってきました。キャンプには慣れているはずの私ですが、その日の夜、ドラム缶風呂の火がなかなか上手く燃え広がらず困っていました。
汚れながら薪を割り続け、火に入れます。「お風呂に入ることができないかもしれない…」何度も諦めそうになりながら、もうひと踏ん張りしたその瞬間、ボワッと目の前が一気に明るくなりました。そのときの嬉しさと言ったら、忘れられません。
子どもたちも毎週の授業で、こんな喜びを感じているのだと思います。「できない…」と思った直後、自分で手にした達成感というのは格別なものです。
私の幼い頃を思い返せば、初めて自転車に乗れた瞬間も、初めて泳げた瞬間も「もう無理だよ…」のすぐ先にありました。そのときの気持ちは、「できた!」というより「できちゃったよ…!」に近かった気がします。そして、そのとき近くには必ず、優しく私を導いてくれた大人がいました。当時は、厳しく見えたかもしれませんが、心から温かく、きっと私のことを「信じてくれていた」のだと思います。
「〇〇、ここまで来い!できる!」
「諦めるな!〇〇ならできる!」
花まるの教室は、子どもたちの挑戦を最後まで応援する場所です。
「自分はできるはず!」と突き進める子にとっては安心して何度でも失敗できる場所、「できないよ…」と半ば諦めている子にとっては、背中を押せる場所でありたい。そう思っています。
子どもたち自身が、自分を信じることがまだできなくても、私は子どもたちを信じています。それが伝わって勇気となり、その先の一歩を踏み出してほしいと願っています。
「先生、レインボータイム、ぜんぶできたよ!」
次の週、Yちゃんが最後まで解ききって持ってきたプリントには穴が開いていました。何度も書いては消して、を繰り返してあいたその穴は、Yちゃんの勲章そのものです。採点をすると、なんと見事大正解! 大きく花まるをつけました。これからもその諦めない気持ちを大切にしてほしいという願いを込めて。
花まる学習会 平山真康(2022年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。