【花まるコラム】『考えるって楽しい!』廣木冴香

【花まるコラム】『考えるって楽しい!』廣木冴香

 高学年授業の最後に行う「Sなぞぺー」(発展的な思考力教材)の解説。「今日のSなぞぺー楽しかった!」「今回は難しかったから早く解説を聞きたい!」と、子どもたちはこの時間を待ち望んでいます。この教材に取り組むうえで大事なことは2つ。① 最後まで考え抜くこと、② 考えたあとを残すことです。子どもたちが宿題として1つの思考力問題を解いてきて、授業では教室長がその問題の解説をします。

 私が担当する教室に、4年生になったばかりのAちゃんという子がいました。彼女はSなぞぺーの宿題がなかなか進まず、「今日のSなぞ難しかった。全然解けなかった」と毎週報告に来ていました。彼女のテキストを見てみると、何かを書き込んだあともなく真っ白なままです。よく話を聞いてみると「なんとなく難しそうだから。多分間違えているから、考えたあとを残すのが恥ずかしい」とのこと。そこで、Aちゃんが楽しんでSなぞぺーに取り組めるよう、先生と一緒に考えていこうと伝えました。

 「まずは答えが出なくてもいいから、いつ解いたのかがわかるように日付を書くこと。そして、必ず問題文を読んで聞かれていることに線を引くこと。この2つを目標に進めておいで」そう伝えると、次の週Aちゃんは「問題はきちんと読んできたよ。線も引いてみたけれど、どう考えたらいいかわからなかった」と報告してくれました。「まずはきちんと問題文を読むことが大事だから、目標達成だよ!」と伝え、「次に必要なことって何だろう。今週の目標はどうしようか?」とSなぞぺーに取り組むうえで大切なことを確認していきます。こうして毎週目標を立てて少しずつ書き込む習慣をつけていきました。半年ほど経つと、きちんと問題文を読む、聞かれていることに線を引く、条件を洗い出してまとめる、ということができるようになったAちゃん。5年生になると、たとえ答えが間違っていたとしても「ここまでのやり方はあってた!」「私はこう考えたけれど、こうやって考えればよかったんだ!」と振り返ることができるようになりました。これまで「答えを出さなきゃいけない」「間違えていたら恥ずかしいから、考えたあとは残したくない」とテキストに書き込みをしなかった彼女の考え方が少しずつ変わっていったのです。

 初めてSなぞぺーの問題に触れてから2年が経ち、6年生になったAちゃん。先日「そろそろSなぞぺーを始めるよ!」と声を掛けると、「今日のSなぞ、すごく楽しかった!」と笑顔でテキストを開いていました。そんなAちゃんのテキストを見てみると、問題文には線が引かれており、考えたあともたくさん残されていました。「たくさん考えてきたね。Aが夢中で解いていたのがわかるよ!」と伝えると、「そうなの、気がついたらあっという間に時間が経っていたんだ。それでね、見て!」と、私に1枚の紙を見せてくれました。そこには、解き方をまとめた文章が書かれていました。最初はなかなか手を動かすことができなかったAちゃん。考えたあとを残す習慣をつけることで、今では自分の考えを整理して説明できるまでになりました。なにより、問題を解くことが楽しいと思えるようになったのです。

 Sなぞぺーに限らず、まずは「考えることが楽しい!」「答えを出すまでの過程がおもしろい!」と思えることが大事だと私は考えています。これは、社会に出て壁にぶつかったときに、諦めるのではなく「何とかして解決しよう!」と前向きに取り組む力にもつながっています。花まるの授業を通してそういった気持ちを育んでいくことで、子どもたちがどんな困難にも立ち向かっていけるようになるといいな、と思っています。そのためにも、教室では子どもたちが難しい問題こそ楽しい!試行錯誤することがおもしろい!と感じられるよう引き続き指導してまいります。

花まる学習会/アノネ音楽教室 廣木冴香(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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