「海外に行ったことがある人？」
そんな質問から始まった今回の社会好き企画。今回参加してくれた子どもたちからは、「タイ」 「ハワイ」 「スリランカ」などいろいろな国名があがりました。
「地球は丸い球体だよね。だから、平面の地図は球体の展開図をもとにして作っているんだけれど、舟が連なったような形の球体の展開図を、どうやってきれいな四角形にしているかわかる？」
最初の難問に、頭を抱えて悩む子どもたち。
「空いている部分を丸めてみる」
「伸ばしてみる」
「先のとんがっているところをくっつけて平面にする」
など、いろいろな意見が出てきました。
正解は、「連なった舟の一つひとつを横に引き伸ばして隙間をなくし、バランスを取るために縦にも伸ばす」。
よく目にする四角形の地図はこのように調整されたものですから、面積や形が部分的にゆがんだものになっています。
次に、1300年前に描かれた日本地図を見て、自分が住んでいる地域を探したり、朝鮮半島で1402年に作成された混一疆理歴代国都之図を見たり、マテオリッチが作った坤輿万国全図を見たりしました。
昔の地図は、朝鮮半島や中国がロシアやアメリカより一番大きく書かれていたり、北海道に佐渡があったりとおかしなところがたくさん。自分のまわりほど正確に大きく美しく描いてしまう人間の心理を読み取りました。
ここで、現代の地図に戻って“あるもめごと”についてみんなで考えました。それは、イランでは「ペルシャ湾」、アラブ諸国では「アラビア湾」と、国によって湾の呼び名が違うという問題。どちらも満足いくような地図にするには、湾の名前をどう表記したらよいでしょう？
子どもたちからは
「海を埋め立てて無くしちゃう」
「二つの名前を合わせてペルビア湾にする」
「世界全国で選挙して決める」
「全然違う名前にする」
「この一年はペルシャ湾、この一年はアラビア湾と交互表記にする」
「思い切って『海』という名前にする」
など、さまざまな意見が出ました。
一応の解決策としては、「The Gulf（あの湾）」とだけ書いておくというもの。「あの湾」といえば、「あぁー、あの湾のことね！」とみんなが理解してくれるだろうということです。また、別の方法として “名前を書かない” という手を使っている地図も。 地図一つとっても、各国で喧嘩にならないような工夫が施されていることを知りました。
ほかにも、街のなかにある国境の話や、北方領土の話、現在も起きているウクライナとロシアの戦争の話など、歴史も踏まえた地図に関する学びを深め、午前のオンライン講義は終了。午後のフィールドワークでは、虎ノ門にある領土主権展示館にて“日本が見ている”世界を探求しました。
子どもたちは狩野特製のワークシートを手に、未知のキーワードを穴埋めするため、展示されているパネルや動画を真剣に見ていました。
「えーここ、何が入るのー？」
「ママ、見つけたよ！これじゃない？『福岡』って書いてある」
「パパもここ、埋められないよ〜」
「パパの代わりに僕が探す！…尖閣諸島のやつ、これだ！」
と、家族で力を合わせて答えを探している姿がありました。
「子どもも大人もどの国の人も、一人ひとりが心のなかに地図をもっていて、それをもとに自分こそ正しいと思っていることが多いものです。また、自分のまわりのことはよく見えて、遠いところはあまり見えていないこともあるでしょう。お互いの地図を出し合い見せ合って、遠いところの地図を見ることで、相手のことを知ることができ、話しあうことができるのだと思います」
そんな狩野のまとめで、「地図から考える世界と日本」イベントは幕を閉じました。
アンケートでは、
「ペルシャ湾やコソボのお話を先生の体験談も合わせてお話しいただいたことで、非常にわかりやすかったです。全体を通して、立場が異なると意見が大きく異なってしまうことがあること、また、解決することの難しさを改めて考えました。 普段の生活では多くの関心を払わずに済ませてしまっていたことを、画像も合わせ詳しく教えていただきありがとうございました。 子どもには難しい内容だったかもしれませんが、小～中学生のうちから今回お話しいただいたような問題があると知ることで、今後もこれらについて考え、将来、解決の糸口が見つかればいいなと思いました。 狩野先生、むぎぐみのみなさま、今回もありがとうございました！」
など、たくさんの嬉しい声をいただきました。
ご参加くださったみなさま、誠にありがとうございました！
（2022/7/10 実施）
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