毎月のコラムの内容を深めるために、教室長が集まって話をしているときに「勉強ってなんだろう」というテーマがあがりました。勉強=生きること、努力の習慣をつけるなどさまざまな意見が出ましたが、私なりの考えをまとめてみようと思います。
「勉強ってめんどくさい」と訴える子ども。
「勉強っておもしろいよ」と伝える大人。
どこか噛み合わないなと考えたとき、ふと勉強には2軸あるのではないかと思いました。
①世界を広げていく勉強
学ぶことにより知識を広げていく段階。「無知は罪」ともソクラテスの言葉にありますが、知らなかったことで損をする、失敗する、他人を傷つけることがあります。そういったことを防ぐためにも義務教育という制度があります。子どもたちにとっては必要だからという目的意識よりも先に、教養として学ぶことが義務づけられています(正確には「保護する子女に普通教育を受けさせる義務」ですが)。
自分自身を救うためとはいえ、やらされるものはめんどくさいですよね。しかし、この段階は絶対に必要なものです。
就職活動での自己分析のときによく考えていたことですが、まずは“知らなければ選べない”ということです。もしかしたら、このコラムが印字されているコピー用紙を作成する仕事がとてつもなくおもしろいかもしれません。社会を支えていますし、改善していけば地球規模の環境問題にまで影響を与えうる仕事です。職場の環境もよく、やりがいと良好な人間関係にあふれているかもしれません。でも、知らなければ志望しようとは思いませんよね。自分の身近な人間が働いていたり、テレビの特集で見かけたりしなければなかなか選択肢の筆頭には挙げられないと思います。子どもたちの夢を聞いても、ランキング上位にあがる警察官や保育士さん、お医者さんはやはりかかわったこと、見聞きしたことのある職業です。
勉強して知識を広げていくことは、可能性を広げていくことと同義です。つまらないものだってありますが、おもしろくてたまらないものも必ず眠っています。私にとっては理科という科目がそうで、中高の教員免許までとりました。自分にとって光り輝くものとの出会いがあれば、世界を広げていくおもしろさに気がつけるでしょう。まだ出会っていない子には経験談を伝えてあげたり、そのおもしろさを知っている人に引き合わせてみたりするといいかもしれません。
②世界を深めていく勉強
世界を広げていき、自分の興味関心のあるものを見つけた子は第二ステージです。こっちはおもしろくてたまらないのではないでしょうか。一つの事柄をどんどん深めていく勉強。わかりやすい例を挙げれば、図鑑を一心不乱に見つめている子なんてまさにこの段階ですよね。教室の年中さんにシャツが恐竜、上着が恐竜、筆箱が恐竜の恐竜博士のHくんという子がいます。公園を散歩していて池で鳥を見かければ「恐竜が進化して鳥になったんだよ」と得意げな表情。「あの鳥の名前は何て言うんだろうね」と私が呟くと、翌週には「調べたんだけれど、頭が緑だったからマガモだよ先生!」と駆け寄ってきました。このオタク性が「深めていく勉強」の最たるものでしょう。そしてこれは、その子の個性、強みにもなっていきます。学校の勉強に関係ないものを深めていく経験だって問題ないです。一度没頭する体験を積んだ子は、別の事柄でもどのようにして深めればよいかわかっています。
世界を広げ、深める。この繰り返しが勉強ではないでしょうか。理想は自発的にこのサイクルに入ること。思い出されるのは私自身、超のつく本の虫でしたが、母から読みなさいと渡された鈴木光司さんの著書『なぜ勉強するのか? 』には手も触れなかったこと。やはりやらされるものに興味はもちにくいです。ただ、その出来事は15年前。1ページも読まなかったのにタイトルと著者の苗字だけでも覚えていたのは自分でも驚きました。今度は自分で購入して読んでみようと思います。
花まる学習会 堀江健太郎(2021年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。