9月のシルバーウィークに友人たちと一緒にBBQに行きました。その日は子ども連れの家族も多くて、私たちの隣でも大人と子どもがそろってBBQの準備を進めていました。しかし、しばらくすると子どもたちは準備に飽きてしまい、公園の広場を気持ちよさそうに走りまわり、いつの間にか鬼ごっこを始めていました。あっという間に小さくなる子どもたちの姿を見て、
「おーい!そっちは危ないよー!」
と心配になった一人の友人が追いかけます。一方で、お母さまたちは「あとは任せた!」と言わんばかりにその様子を見ています。普段からエネルギッシュな子どもたちを見続ける日々。「今日だけは少しだけ休ませて」と心の声が聞こえてくるようでした。
子どもたちの興味の対象は、ころころ変わっていきます。すべり台で遊んだり、砂場で富士山やお団子を作ってみたり、ボールを投げてみたりと目に入ったものにどんどん挑戦していきます。さらに子どもたちはあそびの達人なので、新しいあそび方をその場で思いついてしまいます。一人の男の子がすべり台を逆走して駆け上ると、「ぼくも!」「わたしだって!」とおもしろがって、それに続いてやりはじめました。さすがにこれは見過ごせないと、
「危ないからやめなさーい!」
とストップの声。子どもたちは「楽しい!」と思ったら、もう止めることはできません。飽きるまでやり続けてしまう生き物なのです。大人からすれば、「もうやめて」のオンパレードかもしれませんが、子どもと大人では心地よさの価値観が違うのでしょう。
ある日のアルゴの授業で、こんなことがありました。Iキューブの高積み競争をしたあとの箱しまい競争で、みんなが片づけ終わるかたわら、当時3年生のAくんはなかなか片づけられずにいました。理由は、箱にかかれているアルファベットとは違うしまい方で片づけていたからです。
「早く片づけて次のことをやるよ」
と声をかけても、彼は一向にやめようとしません。
「あとちょっとだけ待って」
そう言ってガチャガチャとキューブを入れては取って、を繰り返していました。しばらく様子をうかがっていると、
「できたー!」
と満面の笑みのAくん。結局、自分のやり方を貫き通しました。子どもは自ら楽しさを見い出し、それに没頭してしまうのです。
それから一年後、Iキューブの奥深さに気がついたAくんは、箱しまいを徹底的に研究しはじめました。Iキューブ片手に意気揚々と教室にやってくると、
「先生こんなしまい方を見つけたよ!」
と嬉しそうに見せてくれました。それからというもの、私も新しい箱しまいのやり方を見つけては彼に見せ、それが毎週のように続きました。そして、そのためてきたものが、いま子どもたちに渡している「教室長からの挑戦状」の箱しまいの問題のもとになっています。
先のことを見越してできないのが幼児期。でも好きなことにはとことん時間を費やせる時期でもあります。そのなかで、子どもたちは新たなあそびの楽しみ方を見つける天才です。少し時間はかかるかもしれませんが、この芽を大切に育ててあげたいと思います。
花まる学習会 小松原学(2022年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。