【花まるコラム】『遊びの天才』石橋修平

【花まるコラム】『遊びの天才』石橋修平

 花まるの野外体験!といえばサマースクールを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、冬休みと春休みには雪国スクールという企画を行なっています。その活動行程はスキーのレッスンをはじめとして、雪合戦、そり滑り、かまくらでお餅を食べる、など盛りだくさん。スキーをするコースと、雪遊びだけのコースがあります。

 このほかにも“雪像コンテスト”という雪遊びをします。内容は“さっぽろ雪まつりの超縮小版”だとイメージしてください。たっぷりの雪を使い、雪像を作っていきます。

 あるとき、私も班リーダーとして1~4年生の男の子7人を担当しました。彼らの特徴は“ザ・男子”。運動とお笑いと少しお下品なことが好きで、誰かが冗談を言ってはみんなで大爆笑…そんな賑やかな班でした。

 さて、私たちのチームも雪像作りにとりかかりますが、その前に何を作るかテーマを決めなければなりません。“ドラえもん”や“ふなっしー”など、アイデアはポツポツと挙がりますが、話し合いはまったく進みませんでした。それもそのはず、私にはわかりました。彼らの顔にはこう書いてあるのです。

「テーマなんて何でもいいから早く雪に触りたい、遊びたい!」
そこで私はこう提案しました。
「ジャンボ雪玉タワーを作らない?20段目指してさ!」
やはり男の子はこういった数字や記録が大好きですね。テーマはあっという間に決まり、雪像作りにとりかかります。役割分担は雪を集める係と、雪で球体を作る係。一番下段の雪玉はバランスボール程度の大きさで、徐々に小さいサイズの雪玉を上にのせていきます。6段目を超えた時点で、大人の私も手が届かなくなってしまいました。そこでタワーのとなりに、踏み台を雪で作りました。踏み台の上で1年生の男の子を肩車し、ようやく頂上に届きました。最上段の雪玉はピンポン玉サイズ。崩れないように頂上の雪玉をそっとのせて…完成!
「やったー!」
喜びをわかち合おうと思い振り返ると、なんとそこには誰もいませんでした。あたりを見回してみると、彼らは少し離れたところで深い穴を掘って遊んでいました。最初は雪集めのためにやっていた穴掘りが楽しくなったのでしょう。彼らの興味の矛先は雪玉タワーから外れていました。子どもの遊びは二転三転するものです。

 なにはともあれ、雪玉タワーはできあがりました。みんなで完成を喜んだあと、さてこの雪玉タワーをどうしたものか…。一人の子がこう言いました。
「壊そうぜ!」
班の全員が即座に同意し、スクラムを組んで突撃。苦労の末、作り上げた雪玉タワーはあっという間にただの雪山に。ワハハと大笑いしている我々を、女の子たちは唖然とした表情で見ていました。その一部始終を見ていた高濱リーダーが一言、
「この班は遊びが上手いなぁ」
そう、遊びにも上手い下手があるのです。「ルールを守って!本気で!楽しんだ者が勝ち!」だと私は考えています。“雪像コンテスト”という遊びのなかで、穴を掘って雪をかき集め、雪玉を作って積み、最後は壊す!興味の向くままにやりたいことをやり尽くしたこの班は、遊びの天才でした。

 遊び方があらかじめ用意されているテレビゲームなどとは違い、外遊びはルールを考える、変える、道具を作るなど工夫し放題です。自ら遊びを生み出す創造性や発想力が養われていきます。

花まる学習会 石橋修平(2021年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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