【花まるコラム】『好きだなぁ』髙橋駿輔

【花まるコラム】『好きだなぁ』髙橋駿輔

 私が大学生の頃、家族とともに群馬県みなかみ町にある「たくみの里」という道の駅へ行きました。ここには、繭から糸をひいて繭細工を作る体験ができる工房があったり、和紙作り体験ができる家があったりと、さまざまな体験施設が目白押しでした。
 そのなかで私たちが選んだのは、ドライフラワー工房。名前の通り、ドライフラワーを使った創作体験を通し、ハーバリウムやリースなどを作ることができる施設です。私は何を作るか迷いに迷い、1辺が10センチほどの正方形のウッドボードを基盤として、ドアプレートを作成することに決めました。
 どうアレンジしようかと悩むこと約10分間。ウッドボードが正方形ということで、1つの辺に1つの季節を当てはめ、4つの辺を使って「春夏秋冬」を再現することに決めました。春の部分にはピンク色のドライフラワー、冬の部分には松ぼっくりや白いドライフラワー、というように季節が感じられるものを探しに行きます。そのお店には多種多様な素材があり、ドライフラワーはもちろんのこと、木の実や枝など、自然味に溢れているので、探している時間はとても心地の良いものでした。選んだ素材をホットボンドを使ってウッドボードに付けていきます。実際に付けてみると、想像以上に素材の色が強調され、色鮮やかかつ自然の奥ゆかしさも感じられるドアプレートになりました。
 それを近くで見ていた母から「そのドアプレート、色合いがきれいでいいね!」と声をかけてもらい、さらに、ハーバリウム作りに勤しんでいた姉からも「そのアイデアおもしろいね~」と言ってもらえました。私は照れくさいような、こそばゆいような気持ちになりましたが、悪い気はせず心のなかがぽかぽかと温かくなりました。

 これまでの人生で、自分の作った作品や描いた絵が日の目を見ることはありませんでした。創造性や美的センスを疑い、自分の作品をなかなか好きになれませんでした。しかし、母や姉から自分の作品を褒めてもらった私は、そのドアプレートが一気に好きになり、社会人になったいまでも大切に部屋に飾っています。それをきっかけとして、自分の描く絵や作品にも自信をもてるようになり、絵心がないなりに子どもたちと全力で楽しみながら絵を描いたり、さまざまな作品を作り出したりすることを「好きだなぁ」と思えるようになりました。

 花まる学習会の年中クラスでは、創造性を刺激するさまざまな作品作りに挑戦します。年長クラスでは、思考実験で自分なりの考えや表現を楽しみます。小学生クラスに上がれば、作文で自分の想いを言葉にします。すべて子どもたちが自分自身で考えつくり上げるものです。
「この線を描いたのがいいひらめきだね」
「この文章のこの表現が素敵だね」
「この作品が好きだなぁ」
 子どもたちのつくり上げたものに対してプラスの言葉をかけていきます。それによって、子どもたちが自分の作品に対して、作っている時間に対して「好きだなぁ」と思える。これこそが自己肯定感につながっていき、何かにチャレンジする意欲につながります。

 私の感じた「好き」を子どもたちに伝え、その「好き」が子どもたちに連鎖し教室中を埋め尽くしていく。自分を「好き」になる、もっと「好き」になる空間を作るために、今日も授業をします。                               

花まる学習会 髙橋駿輔(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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