突然ですが、“ご友人から言われて嬉しかった言葉”はなんですか。私は、「糖質制限ダイエット」をしているのですが、最近1か月で3kgやせることができました。すると、ある友人が「やせた?例のダイエット、頑張っているね!」と早速声をかけてくれました。やせたのは少しでしたが、頑張りを認めてくれた一言が嬉しくなり、その日から「もっと頑張ろう」と思うことができました。自分の頑張りをほかの人から褒められると嬉しいな、と感じた瞬間です。
先日、年長クラスでは、思考実験大会をおこないました。ぶんぶんごまに模様をつけ、回転させたときにどのように見えるかを考える実験です。
こまに色を塗ったあとに回して確かめるのですが、大切なポイントは、すぐに回すのではなく、まずはどのような模様になるかを自分の頭のなかで予想することです。自分でしっかりと考え、こまを回したときのイメージをアウトプットしてみる。最初は手が止まっていた子も、何回か繰り返すうちに「こうなるのではないか」という自分の考えを出せるようになっていきました。そして、こまを回すと「わ~!こうなるんだー!」と、事前に予想してみたからこその気づきを得ている様子でした。
そんななか、素敵なできごとがありました。Aくんは、自分から何かを伝えたり、発表したりすることに消極的な子です。しかし、この日は表情が違いました。Aくんからいつにも増して笑顔があふれていたのです。たくさんの練習を重ねた末に自分でこまを回すことができるようになったからでしょう。お友達に回し方を教える姿もあり、こまの先生として大活躍でした。お母さまによるとその日は、帰り道もずっとぶんぶんごまを回していたそうです。
入会したばかりのNちゃんにも変化がありました。Nちゃんは自分の答えが合っているのか、どうしてもまわりの目が気になってしまい、これまで自分の意見を素直に言えないことがありました。しかし、今回のぶんぶんごまクイズ(回転したらどのように見えるかというクイズ)では、問題を見ると実験結果を思い出し、自ら手を挙げて発表する姿が。自分の考えをしっかりともち、まわりの子の意見に流されず、一人だけ正解する場面もあったのです。お迎えに来たお母さまもその様子を聞いて驚いていました。
実は、この二人の変化の背景には、Tちゃんという女の子の存在がありました。Tちゃんは普段から活発な子で、教室のなかでは太陽のような存在です。素直で、思ったことはすべて口にします。
最初のうちはぶんぶんごまを回せずに泣きそうになっていたAくん。練習を重ねて初めて成功すると、Tちゃんは一緒に喜び「まわせてすごい!かっこいい!」と笑顔で話しかけました。するとAくんは照れながらも、本気度が増し、何度も何度も練習をして、自分で自由に回せるようになったのでした。
TちゃんはNちゃんに対しても声をかけていました。最初のぶんぶんごまクイズで、Nちゃんの予想と結果が一緒だということに気がつくと、Tちゃんは「Nちゃん、よくわかったね!」とみんなに聞こえるくらいの声で言いました。Nちゃんは、照れながらも嬉しそうにモジモジしていました。しかし、それがきっかけでそこからのクイズでも自分の考えを変えずに手を挙げるようになったのです。Tちゃんは思ったことを伝えただけだったのですが、二人にとっては、背中を押してくれる大きな一言に。
友達から褒められることって、嬉しかったり自信につながったりしますよね。一人で学んでいたら絶対に得られない経験です。集団で学んでいるからこそ得られることだなと。
後日、Tちゃんのお母さまにその件をお伝えすると、「実はその前の日に、チアの練習でお友達に褒めてもらったんです。Tはそれが嬉しくてほかの子にもそうしたのかもしれないですね!」とおっしゃっていました。「そうだったのか」と納得でした。自分がされて嬉しかったことをほかの人にもしてあげる。こうやって子どもたちは「幸せ」を循環させていくのだなと感じたできごとでした。
花まる学習会 宮阪太久哉(2022年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。