4月から長い期間を経て大きく成長した、年中のEくんのエピソードです。彼はとても元気で明るい性格。思考実験では、自分の作りたいものがハッキリしており、絵の具を使った実験では、一つの色ではなく、複数の色を混ぜてカラフルなベッドを描き、アルミホイルを使った実験では、丸めたり細くしたり形の変化を楽しみます。また、アルミホイルのシャカシャカする音を聴いて、新発見に目を輝かせていました。そのときの集中力は大人顔負けです。自分の満足したものが作れたときには、
「ねえ!みてこれ!みて!」
と渾身の力作をチームの講師に見せています。そんなエネルギッシュなEくん、熱中し過ぎてしまい、終わる時間がきてもうまく切り替えができないことが度々見られました。床に寝そべり、泣き叫んでしまうこともありました。これがやりたいというものが明確にあるのに、それをやめなければならないことが悔しくて仕方がないのでしょう。しかし時間は有限です。60分という限られた授業のなかには、課題ごとに、終わりの時間があります。限りある時間のなかでいかに楽しめるかということも、花まる学習会では大事にしている部分です。私はEくんのやりたかった気持ちに寄り添いながら、
「まだ続きがやりたかったね。このIキューブ(空間認識力を鍛える立体教具)、せっかく作ったから思い出に残るように心のなかでお写真撮ろうか!」
などと、毎週言葉を変えて伝え続けました。伝えてまだ間もない頃は、やはり切り替えがうまくできなかったEくんでしたが、2か月、3か月と経っていくなかで大きく変化していきました。
ある日、大好きなIキューブの時間の終わりが来たときに、私はいつものように切り替えを促す声をかけました。今日はどうかな、と見ていたところ、彼は組み立てていたキューブを崩して箱の中にしまい始めました。
「キューブをしまって切り替えられたね!」
とEくんに伝えました。その日以降、準備や切り替えが徐々にできるようになり、半年経ったころに、
「準備が早くなったね」
と伝えると、
「はやく次のことをやりたいもん!」
とキラキラの笑顔でこたえました。その姿は、半年前の床に泣いて寝そべっていた彼とは見違えるほどレベルアップした、たくましい姿でした。
成長の速度は人それぞれですが、全員、必ず少しずつ成長をしています。花まる学習会では、すべての子どもたちに寄り添い、声をかけ、成長をサポートいたします。今後も子どもたちの頑張る姿に声をかけ続け、長期的な視点で子どもたちを支えてまいります。
花まる学習会 高野優太朗(2022年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。