【花まるコラム】『「朝学習」で変わる子どもたち』持山泰三

【花まるコラム】『「朝学習」で変わる子どもたち』持山泰三

計算間違いをしないように丁寧に字を書く
ゆっくりていねいに

 テキストの隅に子どもが書いていたメモです。

 「おはようございます」
 朝6時を回ったころから、子どもたちの挨拶が聞こえてきます。そんな子どもたちの挨拶に「〇〇くん、〇〇さんおはよう」と挨拶を返すのが1日の始まり。朝5 時台に目を覚まし、6 時から子どもたちの受け入れ準備をするのが日課になって、4 か月が過ぎました。

 今年度より西郡学習道場は完全オンラインに替わりました。オンラインにしたこと自体も大きな変更です。それに合わせて大きく変えたことが、「朝道場」の開催を決めたことです。夜の学習時間を短くする代わりに、その分を朝にもっていく。子どもたちの心身の成長を考えての変更でした。朝道場に来た子どもたちは、確認テストや計算教材の道場サボテン(以下サボテン)に取り組みます。算数を苦手とする子たちにとっては、このサボテンはできれば見たくないものの一つです。やりたくないものだから、先延ばしにすることが多いため、親子間のバトルの火種になっているという話もこれまで何度も耳にしていました。

 オンラインになった当初、確認テストを終えしばらくすると「7時になったので抜けます」と誰かが言ったのを皮切りに、「僕も、私も」と子どもたちが抜けていきました。数日間は様子を見ましたが変化の兆しもなかったため、仕方なくサボテンを自力でやれない子たちはテスト後にブレイクアウトセッションの別室へ移動させることにしました。部屋を移動させられた子たちは「何が起きた?」「なんで移動させられた?」と疑問符が浮かんでいるようでした。サボテンを終えていないからだとわかると、今度は不満げな顔や叱られるのではと緊張した顔に。「やり方で困ってるんじゃないかなと思って、一緒にやろうかなと思ったんだけど」というと、うんうんと頷く生徒たち。身構えていた生徒たちも、叱られないとわかるとすぐに受け入れモードへと切り替わっていました。

 それから数日間は「今日も移動してサボテンか~」という顔でしたが、一週間ほど経ったあたりで様子が変わってきました。手が動かなかった子が自力で解くようになったり、解くのに時間がかかっていた子のスピードが上がったりするなどの変化が見られたのです。頑なにタイムを計ることを拒んでいた子も、速く解ける実感があったからでしょう、タイムを計ってごらんと声をかけると素直に受け入れるようになりました。月末が近づくにつれ、最初は1ページに10 分以上かかっていた子たちが、2 分で解けるようになるといった成長を見せていました。しかし、月が変わればサボテンの内容が変わるため、また一から自信をつけるための努力が始まります。でも、以前に比べて最初の抵抗はだいぶ低くなっているなと感じます。

 子どもたちは、できない自分を見たくないようです。できない自分を見るくらいならやらない。潔い感じにも受け取れますが、それはただの逃避です。こういうとき、子どもたちは指摘ではなく、寄り添いを求めています。そんな気持ちを察して一緒に取り組むことで子どもは変わっていきます。そして、できるようになると向上心が芽生えます。できるようになると、できないものがあったときに悔しさが出ます。冒頭のメモはそういう日々のなかで子どもが自発的に書いたものでした。

 最近では朝道場に来た子の半数以上がZoomをつなげられるぎりぎりの時間までいて学習をしています。サボテンが終わると、ほかの課題にも取り組む子が出てきました。学校の支度や食事を入室前に済ますようになったという子もいます。できるようになると、行動が変わるということでしょう。

 できないまま無言でZoom を抜けていた子たちも、いまは「いってきます」と笑顔で手を振ってから退出しています。そんな子どもたちを毎朝「いってらっしゃい」と送り出しています。

スクールFC 持山泰三(2021年)


*・*・*花まるコラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだより・FCだよりとともに、会員のみなさまにお渡ししています。


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