月に一度、年中クラスは外授業を開催する。子どもたちも楽しみにしているが、私も同じぐらい楽しみにしている。なぜなら、子ども目線で世界を見ることで、普段気にもしないことに意識が向き、発見につながることがあるから。
人は目や耳から情報を入れ、考えや感情がうまれ言葉にする。また、興味関心事が視界に入ると印象に残りやすい生き物。大人と子どもでは視界の高さが違い、興味関心も違う。同じものを見ているように見えても、実はまったく違うものを見て考えていることがよくある。だから、子どもたちの目線に立ち、物事を見て考えてから自分の想いを言葉にすることを大切にしている。
外授業で歩いていると、「ダンゴムシいるかな」「このお花知ってるよ」「先生、ぼく車が好きなんだ」と子どもたちから次々と話しかけられる。ほかの誰が話していようと関係ない。世界は自分のためにあり、視界に入ったものや、そこから思い浮かんだことを言葉にしている。一人ひとりの興味や見えている世界を知ることができおもしろい。公園に向かう道中にはいろいろな木々や植物があり四季を感じられるのだが、公園のなかにもたくさんの植物がある。階段を上がったところに、色とりどりに咲いた紫陽花を発見。
「これ、何か知ってる?」
「あじさい!」
「いろんな色があってきれい!」
「雲みたいにまっ白!」
「ぼくは青と水色がまざっているのがすき!」
子どもたちが一斉に話しかけてきて、私は全部に反応することができず、笑顔で頷いたり「そうだね」と答えたりするだけだが、子どもたちは嬉しそうに延々と話しかけてくる。この時間も幸せな瞬間。
しばらくすると、ある男の子が原っぱを見て「虫探しをしたい!」と言ったので、少し時間をとった。「ダンゴムシ、いるかな?」と探しだした子につられて、みんなでダンゴムシ探しをした。なかなか見つからなかったが、前日に雨が降ったからじめじめしたところにいそうだと思い、私が大きな板をひっくり返してみた。すると、たくさんのダンゴムシやアリ、ナメクジを発見。久しぶりにナメクジを見て興奮した私が、「ナメクジ発見!」と叫ぶと子どもたちが集まってきた。「おぉ!なんだこれ!」「ナメクジだ!」「気持ち悪い!」「持って帰りたい!」と子どもたちも興奮して観察していた。少しすると、数名の子が木や石の裏を見て虫を探していた。じめじめした場所に虫がいると言わなくても、見て体験し学習している。
教室で子どもたちが、「お母さんと公園に行ってね」「お父さんと川に行ったときね」と楽しそうに話しかけてくる。特別な場所に行かなくても、お父さんお母さんが一緒に楽しんでくれたことが嬉しい様子。子どもたちは、好きな人が自分と同じ目線で物事を見て考えて話してくれることが嬉しいし楽しい。そして大人からのちょっとした声かけで、興味の世界を広げ、さらに夢中になっていく。
これからも、子ども目線を大切にし、子どもたちに寄り添い、興味の幅を広げやる気につながるサポートをしていく。
花まる学習会 日下部龍(2021年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。