【花まるコラム】『好きだから夢中になれる』廣木冴香

【花まるコラム】『好きだから夢中になれる』廣木冴香

 教室では、周りの声が聞こえなくなるほど、作文やキューブキューブに熱中している子どもたちの姿をよく見かけます。そんな様子を見ていて、「私は子どもの頃、何に夢中になっていたのだろう?」と、ふと思いました。

 私は幼い頃、英語、水泳、習字、バレエなどさまざまな習い事に通っていました。それは、母の「たくさんのことを経験して、将来の選択肢を増やしてほしい」という想いがあったからです。しかし、どの習い事も母に連れられて何となく通っていたものばかりで、高学年になる頃にはほとんど辞めてしまっていました。そんななか、一つだけ続いていたのがピアノです。バレエに通っていたときに流れている音楽が大好きで、「私は踊るよりもこの音楽が弾けるようになりたい。だからピアノを習ってみたい!」と母に頼み込んだことが習い始めたきっかけでした。学校から帰ってくると真っ先にピアノに向かい、「晩ごはんできたよ!」と母に呼ばれるまで夢中になって練習していたのを覚えています。誰かに言われたから頑張っていたのではなく、音楽が大好きで、「たくさんの曲が弾けるようになりたい!」という一心で練習に励んでいました。もちろん、音楽を続けていくなかで「楽しい」という気持ちだけでなく、悔しい思いをしたことも、挫折を味わったこともあります。しかし、私がいまもなお続けていられるのは、「好き」という気持ちが根底にあったからです。好きだからこそ夢中になることができ、その結果ピアノが私にとっての強みになりました。

 教室で子どもたちが夢中になってなぞぺーを解く姿や、真剣にキューブキューブに取り組む姿を見ていると、「好き」という気持ちがもたらす力のすごさを感じます。たとえば、3年生のSくん。彼は昆虫が大好きで、日々いろいろな昆虫を探しては調べ、それを作文に書いています。彼がこれまでに書いた昆虫の作文を集めれば図鑑になるなのではないかというほど、裏表にびっしりと詳しく昆虫のことが書かれています。先日の彼の作文には、蝉の羽化について書かれていて「自分の目で確かめたいから、今年の夏は絶対に羽化する瞬間を見たい!」という強い意志で締めくくられていました。
 同じく3年生のAちゃんは、相撲が好きで1年生のときに「憧れの力士の名前を漢字で書けるようになりたい。そして、自分でお手紙を書きたい!」という想いがきっかけで漢字を覚え始めました。「さやか先生、今週もたくさん練習してきた!この字が書けるようになったよ!」と毎週漢字の練習ノートを持ってきて提出し、漢字テストでは毎回満点を取るほどになりました。

 「好き」という気持ちには、パワーがあります。どんなことでもいい。子どもたちには、心の底から「好き」だと思えるものを見つけて、それに没頭する時間を大切にしてほしいと思っています。その夢中になった時間や経験が、のちにその子の強みになるからです。
 教室でも、子どもたちが楽しみながら学ぶなかで「好き」だと思えるものを見つけられるようサポートし、それに熱中できる空間を作ってまいります。

アノネ音楽教室  廣木冴香(2021年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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