【花まるコラム】『成長の喜び』牛島みずき

【花まるコラム】『成長の喜び』牛島みずき

 春は新しい季節の始まり。今年はどんな一年になるのだろう?とワクワクします。先日、花まるの授業で新年度体験授業を行った際にも、同じような気持ちになりました。新年度体験授業とは、年中・年長クラスのお子さまを対象とした次学年のプレ授業のことです。特に、年長クラスの子どもたちは、一週間前に「来週は小学生の授業をやるからね!」とアナウンスすると、みんな目を輝かせていました。お兄さん、お姉さんになるということは子どもたちにとって嬉しいようです。

 当日の体験授業では、新しいことに興味津々な子どもたち。特に「さくら」(一回で文章をくまなく読み取る精読力を鍛える教材)では、私が物語を読み聞かせたあとに、クイズを出します。これが子どもたちに大人気!「はい!」「わかった!!」と、多くの子の手があがり、クイズに答える元気な声が教室中に響き渡りました。彼らが小学生クラスの子どもたちと一緒に「さくら」に取り組む姿を想像して、一人でニヤニヤしてしまいました。

 低学年授業では、前半に声を出したり手を動かしたり、意見を発表したりする教材を扱い、活気があふれます。しかし後半の「あさがお」(書き写し教材) や「サボテン」 (計算教材) の時間では、まるで別世界のように静まり返り、聞こえるのは鉛筆の音だけ。声を出してエネルギーを発散したあとは集中力がグッと高まり、みんな真剣な顔つきになります。

 新年度体験授業でも、同じでした。年長クラスの子どもたちが集中して「あさがお」に取り組んでいる姿を見て、「みんなもうすぐ小学生になるんだな」とこれまでの子どもたちの成長が走馬灯のように蘇り、胸が熱くなりました。

 Mちゃんに出会ったのは、彼女が年中のときでした。出会った当初、彼女は字がまったく書けませんでした。「すみれ(年中テキスト)に名前を書いてみよう」と声をかけても、頑なに首を横に振り続けました。字が書けない自分にどこか自信がないようにも見えました。「じゃあ、まずは先生の書いた字をなぞってみよう!」そう声をかけ、彼女のテキストに名前を書いてあげました。すると、鉛筆を持って、ゆっくりなぞり始めたのです。なぞった字に花まるをあげると、とても嬉しそうに笑いました。それ以降、私が書く名前を一生懸命になぞり、終わると「できた!」と元気よく声をあげていました。その声に、日に日に自信が宿っていくのがわかりました。

 そしてある日、私がいつものようにテキストに名前を書こうとすると、「今日は自分で書く!」と自力で名前を書いたのです!私も非常に嬉しくなり、ハイタッチし二人で喜びあった日を昨日のことのように覚えています。

 そんなMちゃんですが、いまでは「かっくん2」(ひらがな、カタカナの書き順教材)に熱中していて自分から文字を楽しんで書いているとお母さまから教えていただきました。そして、先日の新年度体験授業で「あさがお」のテキストに真剣な表情を浮かべながらテキパキと文字を書く彼女の姿を見て、本当に成長したなと実感したのでした。

 この仕事をしていて一番嬉しい瞬間は、子どもの成長を感じるときです。どんなに小さなことでも「できるようになったね!」と子どもに声をかけるときは、まるで心のなかで蕾が開花したかのような明るい気持ちになります。これからもこの喜びを保護者のみなさまと分かち合い、お子さまがさらに成長していけるようサポートしてまいります。

花まる学習会 牛島みずき(2021年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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