【花まるコラム】『当たり前にできること』豊田星那

【花まるコラム】『当たり前にできること』豊田星那

 雨が降る日も増え、なんだか気持ちもどんよりとする6月。子どもたちを見ていると、新生活に慣れてきた子もいれば、思い通りにいかず葛藤している子もいます。去年の今頃は学校も休校をしていて、外に出られない日々が続いていましたね。そんな激動の一年があったからこそ、より“新”生活に疲れを感じている方もいるのではないでしょうか。今日は、このコラムを読んでくださっているみなさまの心が少しでも晴れやかになりますように、と願いを込めてこんなエピソードを送ります。

 とある日の高学年授業で、私が子どもたちの「Sなぞぺー」をチェックしていたときの出来事です。Sなぞぺーは、低学年クラスで扱っている「なぞぺー」の発展版。低学年クラスでは毎回の授業でさまざまな問題に取り組みますが、高学年クラスでは1週間かけて1つの問題を家庭で解いてくる宿題です。1週間で1問ですので、すぐに解けてしまうような問題ではありません。正解を導き出すことはもちろん大切なことですが、それよりも大切にしていることは「思考の跡を残す」こと。レベルの高い問題であってもくじけずに考え抜くことこそが、Sなぞぺーの醍醐味なのです。この日の問題は、情報整理力が試される問題でした。文章を丁寧に読み、1つひとつ整理していけば答えに辿り着ける。つまり、思考のセンスや空間認識力というよりも、途中で放棄せず、考え抜く力が試される問題でした。1人目、2人目、3人目…そして最後の子。なんと全員が完璧にやり切ってきていました。誰ひとりとして投げ出すことをしなかったのです。
「全員がしっかり最後までやり切ったことがすごいね。みんなは当たり前だって思うかもしれないけど、それって本当に大事なことで、本当にすごいことだよ」
私はそう伝えました。子どもたちはぽかんとした表情を浮かべていました。子どもたちにとっては宿題をやってくることが当たり前。やるべきことをやっただけで「すごいね」と言われることが不思議だったのかもしれません。

 考えてみると、当たり前のことを当たり前にして認められる機会は年を重ねるにつれ減ってくるような気がします。多忙になればなるほど見過ごされてしまうことなのかもしれません。仕事や家事をし、お子さまのことを考え続けている保護者のみなさま。そして、学校に行き習い事に行き、宿題まで取り組んでいる子どもたち。私は心の底から尊敬しています。

 私たちの使命は子どもたちを【メシの食える大人に育てること】です。よく「社会は荒波だ」と言いますが、子どもたちもいつかそんな荒波に突入していく日が来ます。やるべきことをやっているだけでは褒めてもらえないかもしれない。成果や利益にとらわれてしまうかもしれない。落ち込む日もあるかもしれない。そんなとき、自分で自分を認められるようになってほしいと願っています。決して投げ出さずに前を向き続けていることがすごいことなんだと褒めてあげられる自分でいてほしいと思っています。できないことに目を向けることも大事なことです。しかし、時には立ち止まって、いまできていることをうんと自分で認めてくださいね。

「当たり前のことを当たり前にできることって素晴らしいこと!みんな頑張っているね!」
私は教室でこれからもいまを一生懸命頑張っているというその事実に大きな拍手を送り続けます。

花まる学習会  豊田星那(2021年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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