【花まるコラム】『そらもよう』坂田翔

【花まるコラム】『そらもよう』坂田翔

 花まるでは、たのしいもんだいがもりだくさん!さくぶんやあさがお、サボテンなぞぺー、花まる大すき!これからもがんばっておともだちもふえて、花まるがおわったら空をみあげて「花まる学しゅうかい大すきーー!!」とこころの中でおもってる。花まる大すき!!

 ある1年生の女の子の作文です。子どもたちには普段から「作文には、あなたが思ったことや感じたことを、そのままあなたのことばで書こう」と伝えています。授業中に感じていることが「花まる大すき」だったのなら、こんなに嬉しいことはありません。 

 彼女が空を見上げる姿を想像しているとき、ふと、あることに気がつきました。彼女が生き生きとした表情で見ているのは、誰の想像のなかであっても、「晴れ渡った空」なのではないかと。

 心から湧き出る想いを叫ぶ相手に、空が選ばれることは多いでしょう。上を見ればいつでもそこにあって、他の何よりも大きい。自分の気持ちをすべて受け止めてくれそうな、それでいてどんな気持ちをぶつけても揺るがないような、そんな感覚がします。
 では、曇り空や雨空だったらどうでしょうか。その場所も、その大きさも変わらないはずなのに、気持ちよく想いを叫ぶ相手には選びにくいように思います。灰色の雲で覆い尽くされた空には、自分のことを受け止めてくれる余裕がないような気がしてしまいます。子どもが生命力たっぷりに叫ぶには、「晴れている大きな相手」が必要なのです。

 これと同じことが、子どもたちを近くで見守る大人にもいえるように思います。いつでも側にいてくれる大きな存在であることは、まさに空と共通でしょう。
 大人の心が曇っているとき、子どもたちの心には不安が生まれます。言いたかったことも、気を遣って我慢するかもしれません。

 ただここで大切なのは、「心がいつでも晴れていなければ」と思い悩まなくてもよい、ということです。空だって人だって、ずっと晴れているわけではありません。「いつもすぐに雷を落としちゃって…」と気にされるお母さまとたくさん出会ってきましたが、それも当たり前にある天気の一つです。
 楽しみにしていた遠足が雨で中止になっても、激しい雷の音に怯えても、「だから空が嫌い」と言いきる子どもはいないものです。空そのものでなく、空模様の変化に心が揺れているだけ。そしてその心の動きだって、「折り合いをつける」という大切な学びのきっかけです。

 日々いろいろな天気があるなかで、とびっきりの晴れの日が来たら、わが子のすべてを受け止める。そういう日がたまにあるだけでも、子どもは前に進めます。
 雲が溜まり、どうしても雨や雷の空になりそうでモヤモヤしたときは、私にいつでも連絡してください。傘や避雷針、雲を散らす風や、てるてる坊主。そういったものになれたらと思っています。

 

花まる学習会 坂田翔(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

花まるコラムカテゴリの最新記事