【花まるコラム】『得体の知れないもの』田畑敦子

【花まるコラム】『得体の知れないもの』田畑敦子

  1年生の女の子がこのような作文を書いていました。

「さんすう
 がっこうでさんすうがむずかしい。かずが大きいから。」

 ちょうどその日、年中クラスでは、身の回りのものの長さを測る、という思考実験を行いました。持ってきた定規を使って身近なものの長さを測り、体感します。そのあとに、私がメジャーを見せ、「大きいものも測れるよ」と伝えたところ「床の長さは?」と聞かれました。タイルカーペット1枚分の長さが大体50cm。それが18枚なので、大体900cmだね、と長さがわかったのですが、子どもたちは「…ふーん」という反応でした。

 1年生の女の子にとっても、年中の子どもたちにとっても、「大きな数」は彼らの世界の範疇を超える「得体の知れないもの」という認識なのでしょう。

 以前、2年生の算数プリントで「100より大きい数」の単元を扱いました。「765」と数字で書かれたものを「七百六十五」と漢字で書く問題は、読みをそのまま漢字に直せばいいため、ほとんどの子ができていました。
 しかし、反対になると難しいと思う子が多いようです。「六百六十七」をみて「600607」と書く子がいました。漢字を見て、「六百」→「600」、「六十」→「60」、「七」→「7」とそのまま書いていたのです。
 それまでの計算では、一の位、十の位しかやってきていないため、そもそも百の位を使って計算ができる、ということから伝えます。
 また、「100は10が10こ」ということがわかっても「300は10が( )こ」と書かれると、途端にわからなくなる子がいます。ここで効果的な考え方がお金の計算です。
 「10円が5こで何円になる?」と聞いてみました。すると「80円」とか「500円」という答えが返ってきます。「そうなったら嬉しいねぇ」と言いながら、実はね…と図を描いていくと理解できたようでした。
 要は、10ずつ増えていくのだ、ということが理解できればいいのです。いきなり最初から理解できなくても、イメージできれば理解しやすくなります。頭のなかで、10をひとつのまとまりとして思い浮かべられるか、ということです。 
 数字だけを見てパッと考えられる子もいますが、まずは具体物などを使いながらイメージしていくことをおすすめしています。
 たとえば、指を折りながら「10、20、30、40、50、60、70、80、90、100」と声に出して数えると、10こずつ増えていくということがどういうことか理解でき、また10が10こで100となるという実感も得られます。ご家庭でしたら実際に硬貨を使うとやりやすいと思います。

 そして理解したことをパターン化できるかどうか。先ほどの「100は10が10こ」は理解できるけれど、「300は10が( )こ」はできない。数字が変わっただけですが、類題だと思えない。これまで学んだことをつなげて(応用して)いけば解ける、ということは、もう少しいろいろな問題に触れて経験をつめば理解できるようになっていきます。

 今回は2年生の算数プリントを例に出しましたが、どの学年でも起こりうることです。
 「いまできていないからだめ」ということではありません。大切なのは、「いま、この子はどこまで理解していて、どこからわかっていないのか」を把握することです。
 「こうすれば問題が解ける」というある種のスキルを伝えることもときには必要ですが、まずはいま、目の前の子どもたちが何を理解しているかを知って初めて、適切な指導ができます。

 概念を知り、イメージしながら理解していき、知識として身についたそれを駆使していくことで、問題に対応できる力が備わっていく。得体の知れないと思っていたものを知っていくこと、学ぶということはこういうことなのだろうな、と、大きな数をめぐる子どもたちの様子を見ていて感じました。

花まる学習会  田畑敦子(2021年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

花まるコラムカテゴリの最新記事