「すきなもの」
わたしのすきなものは、ざいりょうをいれるとベシベシとパンを作ってくれるきかいです。理ゆうは、つくっているあいだにするベシベシという音をきくとこうふんしてくるからです。
これは、4年生Aちゃんが2年前に書いた作文です。小学生クラスでは、毎回の授業で作文を書きます。1年生は、8月最後の授業からスタートします。作文に苦手意識をもつ子もいますが、このAちゃんの作文を読むと、難しくないように思えてきませんか?
上記の作文は「何が好きか」と「好きな理由」の二部構成。どこか魅力的に感じます。それはなぜかと考えたとき、Aちゃん自身が聞いた音や、その音を聞いて感じたことをありのままに書いているからだと思いました。Aちゃんが「ベシベシ」という音を一番に伝えたかったことがよくわかりますよね。ただ感じたこと・思ったことをそのまま伝えようとすれば、作文は書けるのです。
では、感じたこと・思ったことが書けるAちゃんは、それをどうやって磨いているのか。Aちゃんに聞いてみると、その答えは読書にあるようでした。
小学生クラスでは、子どもたちが読書を楽しめるように「読書ラリー」というものを行っています。年度末にはたくさん本を読んだ子へ「読書ラリー大賞」を渡しています。Aちゃんは、その受賞者の常連です。基本的には読んだ本のタイトル、ページ数を書いてもらうのですが、Aちゃんは昨年の自粛期間中から一言感想も書くようになりました。
たとえば…
本:ノラネコぐんだん カレーライス
感想:トラの上にすわっているノラネコぐんだんをみていると、丸いなって思った。すなおにトラのところに行くのにびっくりした。
子どもたちに大人気の『ノラネコぐんだん』シリーズ。ノラネコぐんだんがカレーを作っているとトラが…そのトラに「カレーを作れ!」と言われ、素直にトラについて行くノラネコたちに驚くAちゃん。そしてトラの上に座っているノラネコは、やはり丸いなと再確認するAちゃん。どちらの感想もAちゃんが感じたことをそのまま書いています。
この感想を読んだとき、あの魅力的な作文とつながっているのではないか、と思いました。そこでさらに、いつそのように感じたのか、Aちゃんにインタビューをしてみました。
Q.書いてくる感想は、いつ感じたものなのか。
A.読んでいる途中に突っ込んだりしている。
Q.どんな本が好きなのか。
A.突っ込める本。(分野は問わない。とりあえず気になったものは読むが、突っ込める本が好き。)
とのことでした。感じたことなどを素直に伝える文章は、読書をしている途中で磨かれているのか!と思いました。Aちゃんのお母さん曰く、いつも本に突っ込み、にやにやしながら読んでいるそうです。
そのAちゃんの読書をするときのルーティンから、「感じること」の大切さを改めて学びました。「おもしろい」「楽しい」「やってみたい」というポジティブなもの。「楽しくない」「やりたくない」「つらい」などのネガティブなもの。どれを感じてもそのまま伝えれば、相手にも伝わりやすくなるのだと思います。
作文を上手く書こうとしなくても、その子自身が思っていることをそのまま書けば、魅力的な作文になります。そのことを子どもたちに伝え続けていきたいなと思いました。
花まる学習会 松浦加奈(2021年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。