【花まるコラム】『熱中できることの強み』熊田多友子

【花まるコラム】『熱中できることの強み』熊田多友子

 前回おこなった国語大会のコンテンツの一つ、「ことばのかいだん」は、2文字から10文字まで、階段状のマスが書かれており、そこに知っていることばを書いていくというものでした。
 1年生のKくんは、大好きな戦国時代や三国志など、歴史上の登場人物の名前をたくさん書いていました。4マス目、5マス目に埋めたのは、「しばきん」と「しばりょう」。「しばきんって誰?」と聞いてみると、「うんとね! しばきんは、しばりょうのおじさんなんだよ!」と得意そうに答えます。
 どんなことをした人なのか、興奮気味に話すKくんを見ていて、何かに熱中していた子どもの頃の私自身の姿を思い出しました。

 子どもの頃、私が一番夢中になっていたのは、「お話づくり」でした。当時読んでいた絵本の登場人物や、テレビに出てきたタレントなどを主人公にして、そこから物語を膨らませるのが大好きでした。
 マンションに住んでいた当時、一緒に遊ぶ仲間は同じ棟に住む男の子がほとんど。その影響を受けて、特撮ものの主人公をお話づくりに取り入れることもありました。男の子たちと遊んでいることを心配され、無理やり年下の女の子のグループに入れられたこともありましたが、おままごとやお人形ごっこが好きな周りの女の子とはほとんど話が合わず、余計に私は自分の世界にのめり込んでいきました。
 何かを紙に書いて空想を広げるということではなく、頭の中で次々と話が展開されるのがおもしろくていろいろ考えていたのですが、母をはじめ、家族や周りの人々からは「うわの空」にしか見えず、よく注意されたものです。大人になったいまだからこそ「相当変わっていたな」と述懐していますが、子どもの頃の私はこの「お話づくり」でさまざまなことを学んでいました。
 自分の頭の中で次々に繰り広げられる劇。それに必要なのはもちろん、台詞です。お気に入りの登場人物に使わせたい言葉が思い当たらないとき、「こういう意味の言葉でよりかっこいいのはないかな」と自分なりに類義語を考え、辞書を引いたり文章を書いたりする習慣が自然と身についていきました。
 小学生の頃は、当時愛読していた「ちびまる子ちゃん」に出てくる慣用句の意味を知ろうと必死でした。たとえば「他山の石」ということばを辞書で調べたのですが、どうも辞書の説明が難しくてよくわかりません。そんなときは、「これってどういう意味?」と父や母に聞いていました。幼少時の「お話づくり」が語彙力を育むきっかけとなり、国語は私にとって得意科目の一つになっていきました。

  何かに熱中するあまり、ほかのことがおざなりになっているのではないかと、大人から心配されることがあります。また、子どもたちの間でも、友だちから「ずっとその話をしているよね」と言われることがあるでしょう。もちろん生活リズムが狂ってしまうのであれば制する必要はありますが、好きなものに熱中すればするほど、その子の世界は広がっていくのです。熱中するという過程を経て、子どもたちは自分の限界や現実も合わせて知り、大人になっていきます。だからこそ、子どものころは時間の許す限り、思う存分好きなことに熱中してもらいたいものです。  

 好きなことにのめり込む、ワクワクする気持ちを大切にしてあげたいと、心から思います。

スクールFC 熊田多友子(2021年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員のみなさまにお渡ししています。

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