先週の授業で、事前に拾ってきていただいた落ち葉や木の実を使って制作をしました。子どもたちには画用紙だけを渡し、「落ち葉を貼るときは、セロテープで」というルールだけを伝えてスタート。自由に想像して制作してほしいという思いから、はじめにこちらから「こういうもの作ろう」などとお題は伝えませんでした。途中、私がセロハンテープの切り方をレクチャーしましたが、伝えたことはそれだけ。それでも「何を作ればいいの?」と質問してくる子はおらず、制作に没頭していて、「何も言わなくても、こんなに自由に手を動かせるんだ!」と驚きました。
たくさん落ち葉を持ってきたAちゃん。大きな葉っぱをちぎって、葉脈だけを残していました(おもしろい発想です!)。たくさん手を動かしていましたが、画用紙に葉っぱを貼らないでいました。貼りたくなったら貼るだろうと思い、あえて声をかけずに観察していたのですが、途中から「貼らないのには何か理由がありそうだな」と思いました。セロハンテープを切っている隣の子をじっと見ているけれど、自分はセロハンテープを使わない。そんな様子だったので、「何か困っている?」と声をかけました。どうやら、「上手に切れない」という理由から貼らないでいたようです。「こうすると、きれいに切れるよ」と切り方を丁寧に教えると、セロハンテープを簡単に切れるようになりました。そして、自らが制作した葉脈を、嬉しそうに画用紙に貼り始めました。
このように、授業中は子どもたちをよく観察しています。子どもたちの行動の要因をこちらの価値観で判断しないようにするためです。Aちゃんの様子をよく観察しないでいたら、「セロハンテープをあえて使わない」のか、「使いたいのに使えない」のかを見極められず、Aちゃんは満足のいく制作をできないまま授業が終わっていたかもしれません。
そして、先日行った思考実験「墨流し」。水を張った水槽に墨汁を数滴垂らし、上から息を吹きかけます。墨汁が広がった水面に半紙をそっとつけ、写し出された模様を楽しむ思考実験です。私が水槽に墨汁を垂らし、「見て!墨が広がっているねぇ!」と言いながら子どもたちに目を向けると、子どもたちはその様子を水槽の上からではなく横から見ていて、墨汁が底に沈んでいく様子を眺めていました。「わぁ!黒いのが落ちてる~!」と目を輝かせながら。上から見ていた私は水面にできた模様だけに注目していましたが、背の低い子どもたちは真横から墨汁が沈殿する様子を見ていた…。なんだか、ハッとさせられました。私はこの実験の子どもたちが驚くポイントは、水面に墨汁を垂らしたときと、半紙に模様が写ったときだと決めつけていましたが、子どもたちから「お楽しみポイントはそこだけではないよ」と教えられたような気がしました。そこで一度、墨汁が水槽の底に落ちていく様子を観察することに。横に広がることなく、さーっとまっすぐに底へ落ちて墨汁の柱が何本かできると、全員が「うわー!」と声をあげていました。
子どもたちの固定観念にとらわれない、自由で柔らかな発想は、本当に素晴らしいと毎回の授業で感じます。成長するにつれて、良くも悪くも発想が窮屈になってしまいがちですが、大人が価値観を押し付けないように意識すれば、子どもたちは自由な発想を失わずにいられるはず。だからこそ、子どもたちをよく観察し、そして作品ができあがったら、
「あなたの作品はここが素敵だね」
と伝えます。
「あなたが考えて制作したものは、すべて『花まる』なんだよ」
「あなた自身が『花まる』なんだよ」
というメッセージを込めて。作品を認められることは、自分自身を認められることと同じ。その認められる経験が積み重なって自信となり、それが生きる力の源になると信じています。
花まる学習会 相澤めぐみ(2021年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。