【花まるコラム】『最幸のクリスマスプレゼント』船水萌 2021年12月

【花まるコラム】『最幸のクリスマスプレゼント』船水萌 2021年12月

 「自分はこんなにも応援されている」と気づいたとき、人は何倍も強くなれる。私がそう信じるようになったきっかけを綴ります。

 私は高校2年生と3年生の時期をニュージーランドで過ごしました。そこでの失敗体験や成功体験は、自分を大きく成長させたことに間違いはありません。しかし、自分が今までの何倍も強くなったと感じたのは、ニュージーランドから日本に帰ってきた直後でした。

 高校1年生の夏。留学したいということを私は家族に相談しました。私は、慎重かつ従順な長女だったので両親は驚いたそうです。しかし、そんな私だからこそ冒険をする良いチャンスだと思い、両親は背中を押してくれました。一人で異国へ飛び立って1年。主体的に勉強をしている自分、英語が上達している自分、友達の輪を広げている自分。自分がパワーアップしていくのを感じました。だからこそ、もっともっと様々なことにチャレンジしたい。2年目もニュージーランドで過ごしたいとわがままを言いました。そのときも両親は「行ってこい!」と笑顔で背中を押してくれました。

 2年後、ニュージーランドの高校も無事卒業し、日本にいる家族のもとへ帰ってきました。「ありがとう!」両親に真っ先にそう伝える予定でした。しかし、明らかに父の様子が違うのです。父は末期の癌でした。私は知りませんでした。私がニュージーランドへ飛び立つ数か月前、父は癌で余命半年と宣告されていたのです。母は、留学をキャンセルすることも考えたといいます。しかし父は、「自分のせいで娘が自分で決めたニュージーランド行きを台無しにするわけにはいかない」と最高の笑顔で私を送り出してくれました。そして、生きて私を我が家で歓迎することを目標に約2年間、闘病生活を送っていたのです。

 その事実を知ったときはショックでした。ショックでしたが、同時に自分がどれだけ大事にされているか、ということに気づかされました。余命が僅かであれば、残りの時間を家族と過ごしたいと思うはず。しかし、父は自らが頑張って生きることで、私の人生を応援することに徹したのです。体は痛かったはず。心は不安でいっぱいだったはず。それでも、私の将来にとってプラスになるだろうと思い、父は異国での私の生活を応援し続けてくれました。父は余命宣告を受けてから3年間生きてくれました。「自分はこんなにも応援されている。こんなにも愛されている」そこに気づいた瞬間、この先どんな環境でも、どんな困難が待っていても、自分らしくやっていけるという大きな自信が私の中に降ってきました。私の帰国はちょうど12月の今頃。父が与えてくれたこの大きな自信は、私にとって最高のクリスマスプレゼントとなりました。それは今もそのまま私の中に在り、これからもずっと私を支えてくれると思います。

 応援の持つ力は計り知れません。次は私が与える番です。教室の子どもたちが「応援されている」と感じられるように接していきたいのです。
 小学生コースの宿題「サボテン」を溜めてしまいがちな2年生の女の子がいました。定期的に電話をしたり、教室で声をかけたりしていました。するとその年の暮れにその子が手紙をくれたのです。

 「あさがおとサボテンをいつもおうえんしてくれてありがとうございます。 先生がおうえんしてくれたから、サボテンがすきにだんだんなってきました! おうえん、ありがとうございました。」

 私にとって、とても嬉しい手紙でした。私自身がそうであったように、応援されていると気づくと、自信になり、自ら行動を前向きに変えていけます。これからも応援をすることを続けていき、教室の子どもたち一人ひとりの自信を育んでまいります。

花まる学習会 船水萌


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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