年中クラスの思考実験、磁石がテーマの時間。
自分の椅子に磁石がくっつくことを発見すると、別の椅子にくっつくのかを試して
「これにくっついた!」
また別の椅子にくっくのかを試して
「これにくっついた!」
と、いろいろな椅子にくっつけて回る年中の子どもたち。
大人からすれば全て同じ”椅子”であり、
同じ種類の椅子なのだからそりゃどの椅子にくっつけてもくっつくだろうという思考になるが、
子どもが見ている世界はそうでないことに気がつく。
子どもたちは”椅子”というカテゴリに分類して考えている訳ではなく、
これはこれ、それはそれ、あれはあれ、と全てのものを別物として捉えている、
つまりはまだ物事を抽象化するまでに至っていない状態なのだろう。
ホワイトボードの左端にくっついた、
ホワイトボードの真ん中にもくっついた、
ホワイトボードの裏にもくっついた、
とそれぞれ試していく様子からもそれがわかる。
そんな子どもたちも、抽象化しようとしている場面が見られた。
実験を始めてから20分くらい経った頃、ある子が
「つるつるしているところにはくっつくね」
と、これまでの実験結果からの考察を始めた。
ある子は、
「ぎんいろのところにはくっつくよ」
と発言。
子どもたちなりに目の前で起こったことの共通項を見つけ出し、抽象化を始めた場面だった。
30分間、磁石をひたすらくっつけに回った子どもたちは自然と思考していた。こうして実体験を繰り返しながら、つまりはこういうこと?を見つけていくことがその子の学びとなるのだろう。
高学年クラスの子どもたちを見ていても同じようなことを感じた。
授業で扱った例題の数字を変えただけの類題に取り組んだときのこと。大人の私たちはその類題を見て、「数字が変わっただけだから簡単だ」と思ってしまうのだが、彼らにとってはその類題が、まるで初めて見たかのように捉えている様子。先ほどやった例題と、いま取り組んでいる問題はまったく別物であるという認識をしているようだった。
そんな彼らも、何問か演習を重ねていくと次第に解けるようになる。
その単元の問題を何度も解く経験を繰り返していくうちに抽象化することができるようになり、「つまりこれはこういうことね」とようやくその単元の学習を理解することができるようになるのだろう。
実体験→抽象化→実体験→抽象化を繰り返すことで、人は学んでいくのだと思った。
〜教室レポートより〜
by Mari Idei