年中クラス、「外遊び」の日。女の子3人と男の子1人、とても仲良しな4人のクラスは普段の授業でも発言が多く、みんなで一緒に楽しもうとしていることが伝わってきます。「外遊びに行こう!」と子どもたちに伝えると、「やったー!」「どこ行くの?」「こうえん?」と大喜び。矢継ぎ早に質問が飛び交います。向かうのは近所の小さな公園。60分の授業中、公園で遊ぶのは30分ほどです。一番楽しいのは、探検気分を味わえる道中です。私はいつも出発前に「赤色を見つけよう」「三角はあるかな?」「この前来たときにはなかったものは? 変わったものは?」など、何か1つテーマを設けて歩くようにしていました。
子どもたちは目を輝かせてあちこちを見るので、歩調はゆっくりになります。「あった!」「葉っぱの色がちがう!」と大はしゃぎ。道行く人が微笑ましげに見守ってくださるとても素敵な町で、子どもたちも挨拶をしながら楽しく歩を進めます。
あるとき、「タイルの数を数えてみよう!」と伝えて出発しました。道に敷き詰められたタイルが何枚あるか数えてみる。最初はみんな、「1、2、3…」と元気よく数えていました。しかし30をこえたあたりから、4人のなかで反応が分かれ始めました。
数え続けて50を突破した2人は「100まであるかな!?」と嬉しそう。もう2人は「いっぱいあるねー」「あ、お花がある」と数えるのをやめてしまいました。どこかのタイミングで、また楽しくなって数え始めるだろうと思い、私は大きな声で数え続けました。数えなくなった2人の目がまた輝いたのは、95くらいから。年中さんの子どもたちにとって、100は特別な大きい数字なのだと感じました。「100!」と言ったときの嬉しそうな顔といったら! そして、ずっと数え続けていた2人の達成感に満ちた顔は、忘れられません。
さて、4人の反応が2つに分かれたように、数に対しての感覚は人によって違います。紙の束や、転がるビー玉を見て、「いっぱいある!」「すくなーい」と言う子もいれば、「50ページあるよ!」「20個入っていた!」と言う子もいます。
私は前者のタイプなのですが、2つ下の弟は、根っからの後者でした。フリーマーケットで箱入りのひよこ人形を買ったとき、私は「いっぱい入っていていいなー!」と言ったのに対し、弟は「これ、30個も入ってるよ!」と言いました。
すぐに中身を数え始めたのです。「へー、たくさん入っているなー」とその頃の私は感心しただけでした。ほかにも、ごはんのおかわりは分数で量を伝えたり、5円玉だけを集めていくらなのかを計算したり、本を何冊買ってもらったのかを数えていたり…。私が「いっぱい!」「少なめで!」と答えるところも、きっちり数字で考えたり伝えたりしていたのです。いま考えても弟の数のセンスは、普段から数えることで磨かれていたのだとわかります。いまでも数字を扱う仕事をしているので、今日もどこかできっちり数えているでしょう。
計算がゆっくりだったり、数えているうちに飛んでしまったりする子がいます。いろいろな理由がありますが、一番は「数え慣れていない」ことが多いです。「いっぱいある!」タイプですね。それは物事を抽象的にとらえることが上手な子でもあります。数える子も、数えない子も、意図的に、さりげなく、お手伝いやお買い物で、自然と数えることを生活のなかに組み込んでいくと慣れていくでしょう。おやつやミニトマトを家族分、日数分に分けてみたり、読書ラリーのページ数を自分で数えてみたりするなど、お手伝いに一つ、組み込んでみてはいかがでしょうか?
花まる学習会 水野青空(2022年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。