【花まるコラム】『好きなものパワー』筒井佳菜

【花まるコラム】『好きなものパワー』筒井佳菜

 私は小学生のとき、勉強のモチベーションが上がらずに宿題が夜まで終わらないことがよくありました。
 私が通っていた小学校では、プリント類の宿題以外に毎日「自学ノート」を使って1~2ページほど自分の勉強をしてくる宿題がありました。やらないと終わらない。でも、やりたくない。どうしたら少しでも楽しく勉強をすることができるかなと思っていた私は、ある一つの方法を見つけましたそれは、「文章中の言葉を自分の好きなものに置き換える」ということでした。

1年生のSくんが算数プリントに取り組む様子を見て、自分の体験を思い出すことができました。算数プリントをカバンから出し、日付と名前を書いたあとにすぐ
「わからな〜い」
と言って伏せてしまったSくん。
『しろいボールが8こ、くろいボールが6こあります。どちらがなんこおおいいのでしょうか』
という問題がわからないようでした。

「先生が問題を読んでみるね!」
と言ったり、
「問題文の数字にしるしをつけてみよう!」
と声掛けをしたりしましたが、
「わからないんだもーん」
と言って伏せたままでした。

 Sくんは普段から山手線の電車が大きくプリントされているクリアファイルを自慢して見せて回るくらい電車が大好きなので、
「見て見てSくん! この白いほうが8両の電車ね。黒いほうは、6両の電車。どっちの電車が何両多い?」
と聞いてみました。すると、
「白いほうが2両!」
と顔を上げて即答。その後すぐに、
「はっちりょう、はっちりょう。ろっくりょう、ろっくりょう」
と歌いながら白いボールの絵と黒いボールの絵をそれぞれ線で結び始めました。線で結ぶことで連結した電車を表しているようでした。

 やる気になったようなのでこのままいけるかなと思った私は
「すごい、そうだね!それをそのままここに書けばいいんだよ!」
と伝えました。すると、
「書き方がわからないんだもーん」
と言ってまた伏せてしまいました。

 ここで初めて、Sくんは引き算の式の書き方、穴埋めでどこにどの数字を書けばいいのかがわかっていなかったのだということに気づくことができました。Sくんのやる気を引き出すことができなかったら、どこまでわかっていてどこからがわかっていないのかに気づけなかったかもしれません。引き算の式の書き方が理解できたSくんは、その後テキパキと算数プリントを終わらせることができました。

 私が小学生のときは問題の登場人物をすべて好きなアイドルの名前に置き換えて読んでいたことを、Sくんとのやりとりから思い出しました。好きなもののパワーは偉大です。
 子どもたちが自分でやってみようと思える原動力は「楽しい!」にあるのだと今回改めて気づかされました。子どもたちのやる気を引き出すために、花まるの教室では私たち講師がさまざまな方法で子どもたちの「楽しい!」「おもしろい!」を見つけていきます。
 これからも子どもたちが楽しみながら学んでいける教室運営をしてまいります。

花まる学習会 筒井佳菜(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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