【花まるコラム】『卵は一番上』吉岡直哉

【花まるコラム】『卵は一番上』吉岡直哉

 低学年思考力教材「なぞぺー」のなかに、指定された条件に従ってグループ分けをする問題があります。たとえば、動物たちを分けるときに、「ザリガニとカエルは一緒ではありません」という問題文の条件からザリガニとカエルは別々のグループに分けるといった具合です。
 2年生のEちゃんは、答えを絵で解答していました。最初の2問は見事正解でした。ですが3問目の牛乳パック、塩、卵を分ける問題を解き終えたときに一言。
「あ、間違えた」
私は、Eちゃんの解答を確認しに行きましたが間違っているところはなさそうでした。
「どこが違ったの?」
と聞くと、Eちゃんは
「袋の一番下に卵を入れちゃだめだった!」
Eちゃんの頭のなかには、実際にスーパーで買い物をするイメージが浮かんでいたのです。私の目の前にもEちゃんとお母さんがスーパーで一緒に楽しく袋詰めをしている光景が広がりました。Eちゃんはお母さんに「卵が一番上でないと割れちゃうからね」と言われたことがあるのでしょう。Eちゃんにとっては書く順番が大切でした。それはお母さんに教わったこと、褒められたことが子どもにとっては一番だからなのでしょう。楽しそうに答えを直す彼女を見て、お母さんの言葉はなんて子どもを幸せにするのだろうと感じました。
 世界で一番大好きなお母さんに褒められるのですから、子どもは世界で一番うれしいでしょう。そしてそのインパクトは絶大です。私もそうでしたが「褒められたいから頑張れる」そんな気持ちはどんな子どもでも持っています。
 算数プリントに取り組むときも「100点を取ったらお母さんとお父さんに見せるんだ!」「だから今日も100点取れるように頑張るんだ!」と目を輝かせる子がたくさんいます。「帰って褒めてもらおう!!」という表情からはすぐにでも見せたいという気持ちをひしひしと感じます。それはお母さんの「すごいね!!頑張ったね!」という言葉があり、子どもが成長できるのは自分の努力を認めてくれる大人がそばにいるからだと感じます。努力や成果、変化、存在そのものを承認してあげる。そんな大人から言われる言葉で子どもはいつも以上に力を出して、成長していきます。
 ある日、一人のお母さまからこんなメールを頂きました。

「先生は小さい頃、教わっていた先生になかなか質問ができなかったんだ。でもそれはとても損したなーと思っている。だからどんどん先生に聞いていいよ」という先生の言葉に息子は、「僕と同じ気持ちの人がいるんだなーと思ったんだ。すごくうれしかった」と話していました。

 その子は自分のあり方、気持ちそのものを承認してもらえたことが嬉しかったのでしょう。そして、このメールを読んで、私も嬉しくなりました。たった一言でも、子どもたちの心に深く残る可能性があるのだと痛感しました。
 「卵は一番上」というなんてことのない一言でも子どものまわりにいる大人からの言葉の力は絶大です。人を幸せにできる言葉を届け、子どもにとって承認されてうれしく感じられるような大人になりたいと改めて思いました。

花まる学習会 吉岡直哉(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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