【花まるコラム】『責任感の芽生え』濱本和美

【花まるコラム】『責任感の芽生え』濱本和美

 以前、テーブルの講師が一人、熱を出してしまい来られなくなった日がありました。正直に子どもたちに「今日は、先生が体調不良で来られなくなったよ。だから、みんなで協力しあってね!」と伝えました。すると子どもたちは「先生の非常事態だ!」と、自分たちで行動し始めました。宿題をみんなで集め、算数プリントはわからない子にわかる子が声をかける、「作文は、はじめにやっておこう!」とさくさくと書き始めました。子どもたちは、私からのお願いを聞き、「がんばろう!」といつも以上の力がわいてきた様子。「和美先生も頑張るから、みんなもよろしくね!」と言うと、「うん!」「『できた!』もみんなでできるよ!」と頼もしい一言。
 これまで見続けてきた子どもたち。私が思っている以上に成長していると思った日でした。子どもたちには、さまざまなお願いをしてしまい、大変だったと思います。しかし、授業後に「ありがとう!」と伝えると、満面の笑みで帰っていきました。
 私やほかの先生たちの力だけではなく、さらに子どもたちの個々の力だけでもなく、チームで協力し、“先生不在の非常事態”を乗り越えました。

 

 「何か手伝うことない?」 
 よく教室で、こんなことを聞いてくる子がいます。こう言われたときは、基本的には、私のお仕事を手伝ってもらっています。
 この日は、2年生のHちゃんと3年生のSちゃんの2人でした。2人には、赤鉛筆を持ってきてもらい、先生たちと一緒に1年生のなぞぺーの丸つけをしてもらうことに。「よくがんばったね!」と1年生をほめてあげる。手が止まってしまっている子に対しては、「これはね…」と説明までしてくれていました。なぞぺーで私たちがつけている☆マーク(一斉指導したとき、ヒントをあげたとき、間違ったときにつけています)も忘れずにつけています。自分たちが、テーブルの先生になった気分で、1年生にどんどん声をかける。きっと、これは普段の私たちの対応なのでしょう。真似をしていました。
 HちゃんとSちゃんに「そこまででいいよ!ありがとう。自分の片づけをしておいで」と伝えると、「もっとやりたかった!この子が、このページわからないって!」「またやらせてくれる?」と楽しみながら、また本気で1年生のことを考えて丸つけをしてくれました。

 

 子どもたちも、大人と同じです。自分の仕事をもらったり、役割をもらったりすると、やりがいと責任感が芽生えてきます。そして、自分なりにどのように動けばいいのか考え、実際に行動します。その経験は、子どもたちに“大人になった”という実感、あるいは自信を与えていくのではないでしょうか。
 これから夏休みに入ります。この機会にぜひ、ご家庭でもお子さまの「仕事」を決めてみてはいかがでしょうか。新聞を取ってくる、箸を並べる、靴を並べる、など小さなことでいいと思います。「あなたがやってくれて、本当に助かる!」なんてことを伝えてあげると、小さな胸は、もううれしさでいっぱいです。この夏、子どもたちがやりがいと責任を持って行える「仕事」が見つかるといいなあ、そんなふうに思います。

花まる学習会  濱本和美(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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