早いもので1学期がもう終わろうとしています。4月から約3か月、子どもたちはたくさんの問題に触れ日々成長しています。問題に取り組んでいる子どもたちからはさまざまな反応が見られてとても微笑ましく思います。問題を見た瞬間に鉛筆を動かす子、悩みながらも諦めず問題に取り組む子、「楽しい!」と言いながら解く子、そして「難しい!」と言いながら解く子。反応は異なりますが、全員が目の前の問題にひたむきに取り組んでいます。
3年生Aくん。
小学生クラスで年に2回行われる「算数大会」は、算数を扱ったゲーム大会で、毎回取り組む問題が異なります。異学年混合のチームを作り、協力しながら楽しんでいる様子が見られます。あるゲームの最後の問題。難易度が高く、多くの子どもたちが悩んでいました。すると初めて算数大会に参加する1年生の男の子が「この問題難しい…」と言いました。それを聞いた3年生のAくんはすかさず
「難しいけど考えがいがあるよね!」
と伝えたのです。このAくんの言葉で「確かに考えるの楽しいかも!」と1年生の彼は難しさを楽しむことができました。
Aくんが「難しい」という言葉を「考えがいがある」というポジティブな言葉に言い換えたことで、チームの士気が上がったことは間違いありません。プラスな言葉への言い換えが咄嗟に出てきたのは、Aくん自身が日ごろから前向きに問題に取り組んでいるからでしょう。現にAくんは普段の授業においても、どんな問題も楽しそうに解いています。なかなか答えにたどり着かないときも、「最後まで頑張る!」とひたむきに頑張る姿は輝いています。
年長Bくん。
年中・年長のテキストには、毎回「ひみつのしれい」という、体を動かしたり声を出したりするコンテンツがあります。授業の最初におこなうことで、子どもたちのエネルギー発散にもなります。ある日の年長クラスのひみつのしれいは「りょうてでそらにほしをかこう」でした。体を大きく使って空中に大きな星を描いたあと、両手に鉛筆を持ってテキストにたくさん星を描きました。すると「ほかの形も描きたい!」と声があがり、ハートや丸、四角などさまざまな形を描き始めました。Bくんは「クリスマスツリーを描く!」と意気込んでいます。その声を聞いたまわりにいた子は「え~むずかしそう!」「クリスマスツリーなんて描けないよ〜!」と言い始めました。そんなまわりの言葉を聞いたBくんは
「やってみなきゃわからないっしょ!」
と鉛筆を手に取りました。両手で描いているため、いびつな形ではありますが、とても立派なクリスマスツリーが完成しました。みんなから「おぉ、うまい~!」と言われ、とても嬉しそうです。そんなBくんを見て、周囲の子も「やってみたい!」とクリスマスツリー描きに挑戦し始めました。
高いハードルを目の前にしたとき、挑戦するもしないも決めるのは自分です。Bくんの「まずやってみよう」という気持ちは、自分自身の成長にもつながり、まわりの空気をも変える魔法だと感じます。
AくんもBくんも、まわりから聞こえたマイナスな表現を否定することなく、プラスな言葉に言い換えています。難しいと思うのは悪いことではありませんが、その気持ちで挑戦が怖くなったり、できないと思い込んだりしてしまうこともあります。なかなか答えにたどり着かないとき、自分にとって高いハードルが目の前にあるとき、考え方一つで心持ちは変わります。「難しそうだけれど、挑戦してみる」「難しいけれど楽しい」というように、「難しい」という言葉自体がポジティブな気持ちにつながってほしいと思っています。
同じ物事も考え方次第では、プラスにもマイナスにもなります。常にプラスに考えられるよう、日ごろの教室でも前向きな声掛けを続けてまいります。
花まる学習会 右田優羽(2022年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。