【花まるコラム】『だからがんばれる』清岡悠河

【花まるコラム】『だからがんばれる』清岡悠河

 先日、家のなかを掃除していたとき、日記を見つけました。昨年2か月ほど続けていたけれど、いつの間にか忘れ去っていたものです。「続けるって難しいな…」そんなとき、ふと数年前に教えていたAちゃんのことを思い出しました。

 当時5年生だったAちゃん。おしゃべりが好きで体を動かすのが好き、けれどちょっと勉強には自信がない女の子でした。ある日、彼女から電話がかかってきました。出てみると、涙声のAちゃん。驚いて話を聞いてみると、一言「どうしても宿題ができません。どうしたらできるようになりますか…?」
 やりたい、やらなきゃという気持ちはあるけれど、どうしてもあと回しにしてしまい結局溜め込んでしまう。このループにはまっていました。どうにかして自分を変えたい!という一心で電話をしてきたのでしょう。その気持ちがあれば大丈夫!と伝えつつ、お母さまとも相談し、毎日サボテン(計算教材の宿題)に取り組んだら私に電話をする、電話が来なかったらこちらからかける、という約束をしました。はじめのうちはこちらからかけることもしばしばでしたが、日を追うごとに少なくなっていきました。それに呼応するように、目に見えて力がついてきたのです。
 まず、算数の計算ミスがほとんどなくなり、スピードも向上しました。Sなぞぺー(高学年の思考力教材)はノートに考えた跡を残すようになり、正解することも増えていきました。何より、教室に入ってくるときの表情に自信が見えるようになってきたのです。「見てみて、ここまで漢字練習してきた」「Sなぞ、こう解いたよ」と話しかけてくれるようになるなど、学習に前向きになったことは明らかでした。当時のテーブル担当の講師と「Aちゃん、ぐんぐん伸びてますね~!」と何度も話したほどです。電話の内容もはじめは業務連絡のようでしたが、「今日こういうことがあってね」「もうほかの宿題も全部できたよ」と徐々にいろいろなことを話してくれるようになりました。
 電話報告を続けて2か月、ついにAちゃんから「できるようになったのでもう大丈夫です。ありがとうございました」という連絡がきました。もう自分でできるよ!という自信がついたのです。その宣言通り、電話をしなくなったあとも毎週しっかり宿題に取り組んで持ってきていました。そしてなんと、5年生の途中で「中学受験をする」と自分で決めたのです。大変なことはわかったうえで「やれるだけやってみたい」という彼女は冷静に、そしてしっかりと目標を見据え、花まるから飛び立っていきました。

 何かを変えたい!と思って行動したとき、一番難しいのはその行動を継続させることだと感じます。私自身何かしようと始めても、三日坊主になってしまうことは多々あります。だからこそ、他者の存在が大切だな、と思うのです。少し弱気になったときに、支えてくれる人、見守ってくれる人、一緒に走る人がいれば、また「がんばろう!」と思えてきます。
 私もAちゃんのことを思い出したことで、また日記をがんばってみよう!とやる気をもらいました。

花まる学習会 清岡悠河(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

花まるコラムカテゴリの最新記事