【花まるコラム】『とびきりの自信』早乙女優介

【花まるコラム】『とびきりの自信』早乙女優介

 5年生Mちゃんとのお話です。
 Mちゃんは要領がよく柔軟な考えができ、Sなぞぺー(発展的な思考力教材)は得意な反面、宿題や漢字などコツコツ積み重ねて成果を得る、という分野に苦手意識があるようでした。
 7月、彼女はサボテン(計算教材)の宿題を2週続けて忘れてきました。前週に「必ず持ってくる」と約束していたこともあり、その日の授業終わりに「取り組むこともそうだけれど、人との約束を守るっていう信頼にもかかわる。それから、宿題をすることそのもの以上にコツコツできる力はMが大人になったときに必ず役に立つよ」という話をしました。
 そこから毎週、Mちゃんとの時間を設け、ときにはお母さまとも相談しながら「1日1ページ、教室では3分ですがご家庭では5分以内を目標に、半分は解ききること」を目標にし、夏休みに入りました。

 7月末から8月中旬まで数週間授業がない期間での宿題の習慣化。夏休みの宿題もある。遊びたい気持ちとも折り合いをつけなければならない。ご両親は忙しく家で一人になることも多い。私はサマースクールに参加していて、なかなかMちゃんをサポートすることができない。そんな期間に、彼女の“自分との戦い”が始まりました。
 Mちゃんは果たして宿題をやってこられたのか、どきどきして迎えた休み明けの授業…。普段と変わらない様子で彼女がやって来ました。「サボテン、頑張った…?」と聞くと、「うん、やってきたよ」といつもの調子でテキストを差し出しました。開いてみると、どのページも目標の半分どころか全問解ききっていました。
 私が驚いていると「意外と簡単だった…」と少し恥ずかしそうに彼女が言いました。自信がついたようで、授業内のサボテンへの取り組む姿勢もよくなっていきました。

 話は変わりますが、私が小学4年生のとき、学校で漢字の100問テストがありました。普段は穏やかな母が、漢字の問題用紙を大量にコピーし本気モードになっていました。なんだか少し怖かったのを覚えています…。
 コツコツした作業が苦手で(毎日やっても将来使わないよ)(漢字なんて使わなくたって…)と思っていた私でしたが、母の応援もあり、テスト当日までとにかく漢字と向き合いました。
 結果は100点。大きなテストで満点を取ったのは生まれてはじめてでした。友人や担任の先生に褒められ、(漢字は得意!)と有頂天でした。なによりも母から褒められたことがとても嬉しかったのをいまでも鮮明に覚えています。そこから現在に至るまで、私は漢字が大好きです。

 さて、サボテンは9月から新しい単元に入りました。先日のMちゃんはあと一問というところで3分が経過し、とても悔しそうにしていました。それでも「私、最近サボテン得意かも!」と言っていました。全力で毎日頑張っている彼女だからこその、前向きな感情だと思います。
 何事も要領よくこなす力は大事ですが、ときにはコツコツ努力を積み重ねていくことも大事です。そこで勝ちとった“自信”は才能や運で得た自信以上にとびきりの自信になるのだ、と強く思います。

 これからの人生、漢字、宿題、勉強に限らずコツコツ努力を積み重ね、心の底から“とびきりの自信”をもって生きていける。みんなにはそういった経験をたくさん積んでほしいです。

 家庭のみでの子育てが大変な昨今、花まる教室がそんな経験のきっかけのひとつになればと思います。

花まる学習会 早乙女優介(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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