【花まるコラム】『隠れた才能に出合える場』持山泰三

【花まるコラム】『隠れた才能に出合える場』持山泰三

 西郡学習道場では、開校以来「日曜特訓」を月に1回行っています。始まった頃は、その名のとおり「特訓」という感じで一日学習をしていましたが、2020年度、完全オンラインに切り替わるタイミングで内容を一新しました。普段の授業とは違う、心が躍動するような学びを提供することを目標に、子どもたちが知らないこと、未経験のことを楽しく学べるものにしました。

 「動物の不思議」「星や惑星に関すること」「開いてみたらどうなってる(野菜などの断面)」「実験」などの理科に関するものや、「地図記号で遊ぼう」「都道府県で遊ぼう」といった社会に関するものなどをテーマに設定しました。各回とも第1部ではクイズを通して「知識」を獲得するコーナー、第2部では学んだことを使って、発想力で楽しむコーナーというスタイル。普段の授業とは違った表情や好きな分野で生き生きする姿をたくさん見ることができます。ときにはその分野の専門家を招いた特別回、「日本の地図と世界の地図」「攻める城守る城」「落語講座」「ロボット工作」なども実施しています。

 今回はそのなかから「お笑い」に関する回のことを書きたいと思います。お笑い芸人の肩書をもつ者花まるグループ社員が講師を務め、お笑いを通じて「考えることのおもしろさ」を伝えようというものでした。子どもたちに開示したのは「お笑いに関しての特訓」の一言だけ。何をするか細かいことは事前に伝えてはいませんでした。Zoomに入ってきた子どもたちを見ると、期待と不安が半々といった感じでした。

 芸人の「師匠」(その回での呼び名)から子どもたちへさまざまなお題が出されます。最初に出されたお題は「変なところを見つけ出せ!ツッコミ千本ノック!」というものでした。シートには天気に関することなど、テーマにそったイラストがいくつも並んでいます。ただし、なかには飴や蜘蛛、雷親父といった、テーマの言葉と同じ音だけれど違う意味のものが潜んでおり、それを見つけては「〇〇はおかしい」とツッコミを入れていきます。最初は構えていた子たちも、「自分も見つけた」「私も言いたい」と手を挙げています。子どもたちの心はあっという間にほぐれ、「お笑いの世界」に引き込まれていました。

 次は「説明上手はだれ!」。あいうえお作文形式で、お題に出された言葉を説明する問題です。説明になっていなくても、おもしろければOK。ツッコミ千本ノックで火がついた子どもたちは、「あっ!」という表情を浮かべてはすぐに下を向いて書き始める、そんな動きがあちこちで見られました。できあがると師匠に見てほしいと、次々と手が挙がります。正解も間違いもないお笑い。どこかおかしなところがあったとしても、師匠がうまく笑いに変えてくれる。普段、まったく発言しない子が手を挙げていたのは、そこに安心感があったからでしょう。子どもたちの作品をいくつか紹介します。

「おすし」
誕生日会にしを食べるとせだ
さしみが酢飯にのってるばらしい文化

「デビル」
っかいのにビッてばっかのール守らないやつ
ッドボールにビったーキー

 最後のお題は「漫才をつくろう」。ボケやツッコミを明確にし、台本を作ります。最後にそれを使って師匠と漫才をするというものです。ツッコミ役かボケ役を選んでもらい、自分の作った台本でプロの芸人と漫才をし、それで人が笑ってくれる。何人もの子がそんな貴重な経験をして、その回が終わりました。子どもたちの感想には、「お笑いの難しさや芸人の人たちのすごさなどを感じた」などさまざまな意見がありましたが、圧倒的に多かったのは「おもしろかった」というものでした。なかには「師匠は僕の大切な友達です」と勝手に友達認定する子もいました。すると翌日の授業で、子どもたちに変化が。授業で少しおかしなことがあると、「先生それ〇〇ですよ」とツッコミを入れてくるのです。さらに、誰かの発言にほかの子がかぶせてくる。そして笑いが生まれる。これまでには見られなかった光景でした。自分でも笑いをつくれるのかもしれないと気づいた子が何人もいたのだろうと思います。

 西郡学習道場では、学習習慣の定着や学力を伸ばすことだけでなく、子どもたちの才能を見つけ引き出すことも意識しています。そのために必要なのは「きっかけ」ひとつ。ただ、はじめの一歩を踏み出すときには、誰しも躊躇してしまうもの。特別回のように「比べない、飾らない、否定しない」空間だからこそ、子どもたちは安心して「初めて」に挑戦し、自分自身でも気づかなかった一面に出会えることがあるのです。

 今年の夏期講習でも、本科コースでは読書と作文の才能を引き出すような、「読書感想文の書き方」という授業も行います。この夏が、子どもたちにとって新たな自分と出会える夏になりますように。

西郡学習道場 持山泰三(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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